寿司屋でワインを飲んでいるのは日本人だけ…いまインバウンド客が「日本酒」を大絶賛している「驚きの理由」
寿司屋でワインを飲むのは日本人ぐらい
私が取材に伺ったのは、平日の昼間だったが、店内は10人ほどの英語の解説を聞く見学グループとテイスティングを楽しんでいるインバウンド客で混雑していた。そんな中、アメリカ人のスタッフが店内を見回し、日本語やシステムがわからずに戸惑っているインバウンド客がいないかと、こまめに声をかけているのが印象的だった。 ここに見学に来る外国人には、自家製酒を造っている人も多く、自ら作った酒を持参し、アドバイスを求める人もいるそうだ。 日本酒がここまで海外で人気になった理由について、松井社長は平成25年12月に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことが大きく影響しているという。 「その国の料理を味わうには、その国の酒が一番合うと言われます。よく外国の方から聞く話ですが、寿司屋でワインを飲んでいるのは日本人くらいだと言われています。海外では、現地のお酒もその食文化に含まれていると考えられています。『和食』が無形文化遺産となれば、一緒に味わうお酒は当然、日本酒になります」 また、外国人の日本酒ファンを増やすには、海外の日本料理店で美味しい日本酒を提供できるか、ということも大きなポイントであり、ファーストインパクトが重要なのだという。最初に飲んだ時に「美味しくない」と思ったら、その先、何年も日本酒を口にすることはない。 テイスティングに出している日本酒もこのファーストインパクトを考えて、フルーティな香りの大吟醸などを勧めているそうだ。残念ながら、最近、日本の若い人たちが日本酒を飲まなくなってしまったのは、飲み放題などの美味しくない日本酒の印象が残ってしまったためだとも指摘する。
「飲む」だけではなく「学ぼう」とする人も
松井酒造では、インバウンド客の集客のため英語のHPを作成し、店内ではロボットのペッパー君の説明をバイリンガルで聞くことができる。そして、パンフレットの表紙には、人気アニメーター米山舞さんを起用して作成した、お酒のキャラクターが描かれている。世界中の若者に人気の日本の文化、アニメも日本酒の普及に役立っているという。 新海誠監督のアニメーション映画『君の名は。』の中で、主人公の女子高生、三葉が口噛み酒をつくるシーンは印象的であったが、ゲームやアニメの中に登場する日本酒は彼らにとってクールで神秘的なものに映っているそうだ。 さらに、日本酒の魅力に取りつかれた外国人の中には、消費するだけでは飽き足らず、日本酒の正しい知識を身につけるために製造工程や料理とのペアリングなどについて学ぼうとする人たちも増えている。 国内外で日本酒の伝道師・SAKE EXPERT(サケ・エキスパート)を育成する講座を開催し、資格を発行している一般社団法人「ジャパン・サケ・アソシエーション」は、イタリア、タイ、台湾、ブラジルに支部を持ち、全世界で既に1000人以上のホルダーを有しているが、その6割は外国人だという。 日本酒が海外でこれほど人気がある理由について、代表の葉石かおりさんにお話を聞いた。葉石さんは、毎年、4月に京都の松尾大社で開催されている「松尾大社 酒-1グランプリ』の実行委員長も務めている。