追い風から逆風に 破れた希望、小池氏の誤算
一時は政権交代も予感させながら、終わってみれば公示前勢力を下回る50議席にとどまった希望の党。衆院選後の25日に開かれた両院議員懇談会では、敗北の責任を取って、小池百合子代表(東京都知事)の辞任を求める声も出た。小池氏は「創業者としての責任がある」として代表は続けるものの、国会議員の中から共同代表を選出し、自らは「都政を中心に進める」意向を明らかにした。 昨夏の都知事選、そして今夏の都議選と小池氏に吹いた追い風は、この秋の政治決戦で逆風に転じた。
●善玉ヒーローが悪玉に
希望の党失速の一因は、いわゆる「排除」発言の影響が指摘される。発言は9月29日に行われた都庁での定例記者会見で出た。質疑応答で指名されたフリージャーナリストの横田一氏は「(民進党の)前原代表が昨日、(同党候補者に対して)発言した『公認申請すれば排除されない』ということについて、小池代表は安保、改憲で一致する人のみを公認すると(言っている)。前原代表をだましたのか」と質問した。 横田氏の声があまりマイクで拾えていなかったため、小池氏は「これ、あえて音声入ってないの」と横の都庁スタッフらに問いかける。「最初から(話しますか)?」と尋ねた横田氏に、小池氏は「いやいや」と首を横に降った後、「(前原代表が)どういう表現をされたかは承知していないが、排除されないということはございません。排除いたします」ときっぱりと答えた。 この発言はメディアで大々的に報じられ、小池氏が示した排除方針にリベラル系民進党候補者は反発。枝野幸男氏による立憲民主党の設立につながった。横田氏は語る。 「1年前、自分が崖から飛び降りて、自民党から公認をもらえず草の根選挙をやった小池さんが、逆に自分が公認権を持つ権力者としてリベラル派切りをする。善玉ヒーローが悪玉になってしまった」
●本当の意味でのメディア戦略が不十分
小池氏の「排除」発言について、リスクコミュニケーションの専門家である石川慶子氏は「戦略的に使った言葉ではないのがポイント。(東京都・愛知県・大阪府が地方自治などで連携する)『三都物語』は、彼女が自ら用意して戦略的に使った言葉だが、『排除』は、記者の質問で引き出されてしまった言葉であり、意図しない言葉。つまり、本音が出たってことですよね」と分析する。 選挙前に一般紙から取材を受けた際、記者は石川さんに対し、小池氏がテレビ局を重視し、記者会見では先にテレビ局記者からの質問を受け、自分たちを後回しにする、などと不満をもらしていたという。 小池氏が本当にテレビ局を重視しているのかは不明だが、石川氏は「メディア戦略で一番重要なのは、記者の気持ちをきちんとつかみ、評価されること。内容を掘り下げて報道するなど、記者のミッションを果たそうとする彼らの気持ちをつかむのかが本当の意味でのメディア戦略だが、彼女は記者の気持ちをつかみ切れていないのでは」と指摘する。 「政治信条の合う者同士が政党を組むのは当たり前の話。通常なら、慎重に言葉を選んで話すところ、うっかり『排除』というきつい言葉を使ってしまったが、記者との関係がうまくいっていれば、あれほど叩かれるような報道にはならなかったと思う。記者たちの中に不満のマグマがたまっていたからではないでしょうか」