技術革新指数は世界13位、なぜ日本の「研究開発力」は“オワコン”化したのか?
なぜ博士課程は不人気?学生のシビアな本音
文科省が実施したアンケート調査では、修士課程を修了した学生が就職を選んだ理由について尋ねたところ、「経済的に自立したい」「社会に出て仕事がしたい」という回答が1位、2位に。 そして、「博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない」「博士課程に進学すると修了後の就職が心配である」「博士課程の進学のコストに対して生涯賃金などのパフォーマンスが悪い」という、なんともシビアな答えが続きました。 以前はよく言われていた「末は博士か大臣か」という言葉はすでに死語になり果てて、博士を取れば人生バラ色とは思いにくい状況になっていることがうかがえます。
優秀な海外人材を取り込む「国際頭脳循環」とは
せっかく国が資金的支援をして研究設備を整えたところで、それを使いこなす人材が研究の場に居ついてくれなければ、ルールチェンジを引き起こす技術革新など望むべくもありません。 これを改めて問題視したのが、このたび国の有識者会議が取りまとめた「シン・ニッポンイノベーション人材戦略」。優秀な人材が将来への希望を持ちながら研究の道を歩み続けてくれるよう、どのような改革が必要かについて議論を整理しています。 まず、問題提起しているのが、国が補助金を通じてサポートしてきた研究資金の使い道です。 競争的資金制度や拠点形成支援制度について、現状では主に研究設備の整備に使われています。報告書では、こうした制度で拠出する資金の使途について、研究者の暮らしを支える人件費の比重を高める方向性を打ち出しています。 ただし人口減が続く中で、税金を原資として研究人材の暮らしを支え続けるのは現実的ではありません。そこで報告書が打ち出しているのが、国内人材の海外での研究や、優秀な海外人材の取り込みを推進する「国際頭脳循環」という考え方です。 報告書では以下のような取り組みによって「国際頭脳循環」のサイクルを強化、拡大すべきと論じています。 ・(1)早期段階の人的ネットワーク構築に資する学生・大学間交流の促進 (2)人口減少や人材獲得競争下における戦略的な海外優秀人材の受け入れ・活躍促進 (3)海外在住の優秀人材を包含した国際頭脳ネットワークの獲得 (4)グローバル人材の社会での活躍を促進する環境構築(留学経験者の積極採用や国籍にとらわれない採用など産業界との連携、入管政策等) (5)先端・重要分野での戦略的なネットワーク強化、個が持つ点としてのネットワークを面として拡大し活性化 要するに、国内の人材育成になけなしの国費を振り向ける一方で、優秀な人材に海外で研究を積んで、その後で日本に戻ってきてもらう。そして、海外の優秀な人材に日本に来てもらう、という2つの方策で人材育成のウイークポイントを埋め合わせようというわけです。