稲葉浩志、松本孝弘、福山雅治、ポルノ……街が活気あふれる凱旋公演 ゆかりの地を知るきっかけにも
音楽における“レペゼン”ーー特にヒップホップの世界では、自分の出身地やコミュニティを誇りに思い、それを表現することが重要なテーマでもある。アーティストが自らのルーツを大切にし、そのルーツを音楽に反映させることが、地に足のついた説得力のある作品や音楽活動へ繋がっていく。この地元意識、あるいは“レペゼン”は、ヒップホップだけでなく、あらゆるジャンルのアーティストに共通するものであり、日本のロックやポップス界にもその例は多い。特に“凱旋公演”という形でその“レペゼン”を具現化するアーティストたちは、地元への感謝を形にし、自らの出発点を省みることで新たなステージへの挑戦に向けた契機としてきた。 【写真】稲葉浩志の近影 B'zのボーカル、稲葉浩志が故郷の岡山県津山市で2024年8月に行った凱旋公演は、そのひとつの例である。6月からスタートした全国ツアー『Koshi Inaba LIVE 2024 ~enⅣ~』の一環として行われたこの凱旋公演は津山文化センターで開催され、その収容人数は最大約1000人程度とアリーナクラスの会場を満杯にする稲葉にとっては比較的小規模であったが、その熱気は言葉に尽くしがたいものだったという。実は2017年にもB'zとして同会場でライブを開催している稲葉。約7年ぶりの同会場でのライブとなった今回は、ソロライブとして初めての凱旋公演ということもあり、最新アルバム『只者』からの楽曲を中心に、ソロでのキャリアを横断するような楽曲たちが披露された。このライブの熱気は会場だけにとどまらず、全国から駆けつけたファンをあたたかく迎える、街をあげた歓迎ムードもあり、会場周辺の商店街を中心に大きな賑わいを見せた。 そしてB'zのギタリストの松本孝弘も、故郷の大阪府豊中市で2024年5月に凱旋公演を行った。豊中市名誉市民でもある松本にとって同市は彼が幼少期を過ごした場所であり、彼の音楽的ルーツが形成された土地でもある。この公演は、豊中市立文化芸術センター 大ホールで全国ツアー『Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-』の千秋楽として行われ、稲葉同様に地元への恩返しの意図が強く感じられる公演となった。ライブ開催期間中、同会場の中ホール(アクア文化ホール)では、普段は豊中市役所に展示されている松本の手形やサイン、パネルを展示した特別応援イベントが開催され、名誉市民らしい自治体からの歓迎も印象的である。また、あわせて豊中市内の高校軽音楽部による『B'z 松本孝弘さん 豊中公演記念 ~春の高校生軽音楽フェスティバル~』も開催されるなど、次世代のミュージシャン育成のために豊中市の文化芸術振興基金に寄付を続けてきた松本の気持ちに応えるような催しもこの凱旋公演に花を添えた。 昨年、結成35周年のアニバーサリーイヤーには、ベストアルバムを携えた大規模会場を巡る全国ツアーを開催したB'z。そんな彼らは今年、それぞれのソロ活動へシフトしている。バンドとしての大きな節目を経たこのタイミングでソロ活動を活発化させ、さらには故郷凱旋公演を行うことは、まさにB'zとしての新たなステージへの挑戦するために自らを見つめ直している動きであると言えるだろう。 地元への感謝の気持ちが溢れ出す凱旋公演を予定しているのが、福山雅治である。福山の凱旋公演は、2024年10月に開業する長崎県・長崎スタジアムシティのこけら落としとして行われる予定である。この会場は長崎市の新たなランドマークとなる施設であり、その初ステージを飾ることができるのは福山ならではの偉業である。福山は、これまでにも故郷である長崎市の稲佐山で定期的にライブを開催してきており、凱旋公演で故郷との繋がりを持ち続けてきた。そんな福山による長崎スタジアムシティ完成を祝う今回の公演は、なんとフリーライブ。そして、長崎県民を対象にしたライブビューイングも県内各地で行われることが決まっており、ライブの開催形式からも地元への感謝の気持ちが浮き彫りになってくる。『Great Freedom』と題されたこのライブに込められた「心はどこまでも自由である」という想いがステージで表現され、会場の長崎スタジアムシティを起点に長崎の街やそこに住む人々の未来が自由に開かれていくことを象徴するイベントになるはずだ。