タクシー台数規制で誰が得するの?/木暮太一のやさしいニュース解説
先日、自民、公明、民主3党は、国がタクシーの台数制限をする法案(「タクシーサービス向上法案」)で合意しました。これは要するに、「タクシーが自由に増えないようにする法案」です。 ―――「なんでそんな法案をつくるの?」 それは、「タクシー運転士の労働条件改善が目的」、とされています。タクシーの台数が増えてしまうと、お客さんをとれないタクシーが出てきます。つまり、働いても稼げないタクシーが出てきてしまうということです。だから、台数を規制して、「ちゃんとお客さんを取れるように」しようとしているのです。
小泉政権の規制緩和で台数が増加
―――「なんで今なの?」 タクシーは2002年2月(小泉政権時)に施行された改正道路運送法で参入が原則自由化されました。そのため、新規参入が増え、タクシー台数が増えています。 「そのせいで、給料が減った! だから再び量を規制して、減らせ!」と業界が反発していたのです。なお、タクシー運転士の平均の年間所得は291万円だそうです。 ―――「うーん、お客さんがいないのはかわいそうだけど……」 タクシーにかぎらず、どんな商売でもお客さんに来てもらうために必死に努力しています。また、供給者が増えたら、一人あたりの売上が減るのは当然です。ラーメンブームが起きて、ラーメン屋が増えたら、1店舗あたりの客数が減ります。当たり前の話です。 世の中みんな同じ条件でビジネスをしていますので、タクシーだけ「増えないようにしろ!」というのは理にかなっていません。 また、タクシー業界は、「このままでは事故が増える!」ということも規制理由として挙げています。 台数が増える→過当競争になる→収入が減る→稼ぐために長時間労働をする→事故が増える、という理屈です。 ―――「なるほど」
1台あたりの事故は増えていない
一般社団法人 東京ハイヤー・タクシー協会のホームページに、「タクシーの事故件数と乗務員賃金との関係(全国)」というグラフがありました。