若者がつなぐ平和のリレー 佛教大で5年ぶりの「原爆展」
若者がつないできた平和のリレーが再びつながった。佛教大社会福祉学部社会福祉学科(京都市)の学生らが毎年開いていた「原爆展」が11月、5年ぶりに開催された。広島訪問などを通して原爆被害に向き合った若い世代は「忘れてはいけない」「伝え続けたい」という思いを深めた。 【写真まとめ】毎日新聞記者が撮った 原爆投下1カ月の広島 「原爆展」は被爆60年だった2005年に始まった。調査・研究の成果発表や京都在住の被爆者を招いた証言会、証言を基にした絵本や紙芝居の創作も手がけてきた。社会福祉学科の4年生がゼミで企画案を練ってきたが、20年から新型コロナウイルス禍で中断を余儀なくされた。通算16回目となる今回は、過去の企画を経験した先輩がいない中での準備となった。 今年の企画に関わった学生は13人。ほとんどは広島、長崎の原爆被害を本格的に学ぶのは初めて。資料などで一から事実を確認し、後遺症や被爆者が受けた差別なども知った。卒業生が制作した紙芝居の朗読会を開いたり、原爆の日の8月6日に広島を訪れて被爆者の証言会に参加したりした。 11月6、7両日にあった「原爆展」は、手作りの雰囲気が伝わる内容になった。被害の実態や核兵器を巡る現状を伝えるパネル、広島訪問の様子を紹介する写真の掲示、絵本や文献の展示、過去の原爆展の紹介。全ては「知ってほしい」という思いから生まれた。 樫葉由衣果さん(22)は、広島訪問の経験を振り返り「この地で起きた事実を受け止められなかった。知らないといけないし、後世に伝えていくことが大事だと思った」と話す。小学4年の時に家族旅行で広島を訪ねたという栗林和(なごむ)さん(22)は、改めて被爆地を歩きながら「この下に人々の恨みやつらい思いが残っていると感じた」と言う。 準備のさなかだった10月、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授与が決まった。「『良かった』というだけでなく、原爆について深く理解することにつながってほしい」(栗林さん)。被爆者の苦悩や悲しみを実際に聞いたからこその受け止め方だった。 会場では色とりどりの折り鶴を来場者たちと作った。次年度のゼミ生に託し、来夏の広島訪問時に供えてもらう。学生を指導する眞砂照美教授は「社会福祉を学ぶ学生にとって、平和というテーマは基礎にあるべきもの。被爆地を歩いた学生はぐっと姿勢が変わる。積極的な学びをアウトプットするための企画を続けていきたい」と話している。【宇城昇】