補強に成功した球団はどこだ!
オリックスと日ハムの明暗
パ・リーグは、楽天が堂々の前半戦の補強ランキング1位だろう。課題だった打線にメジャー通算本塁打434本のAジョーンズ、マギーの両外国人選手を獲得し、この4、5番コンビがチームに大きな化学反応を起こした。元阪神の通訳からスタートして、高津の米国挑戦に帯同するなど、米国野球事情に詳しい編成のフロントマンのお手柄だ。また新人ではドラフト2位の則本が開幕投手を務め、その後もローテーを守って8勝を挙げている。昨年7勝を挙げた高卒ルーキーの釜田、6勝の塩見、8勝の左腕、辛島ら、合わせて21勝を挙げた若手投手がこぞって不振や故障で消えたが、その穴を2人の外国人選手で変革した打線と、則本と、同じく09年ドラフト1位の戸村らがカバー。ラズナー、青山のブルペンを補強するためにメジャーから凱旋帰国させた斎藤隆も怪我などで出遅れたが、後半戦にはプラス戦力として期待されるところだ。 楽天に続くのは日ハム、ソフトバンクの2チームだと思う。 オフに大きな話題を提供したのが、オリックスと日ハムの間で行われた、大引、木佐貫、赤田―糸井、八木の大型トレードである。結果的には、どちらが得したのだろうか。日ハムでは、大引がレギュラーに定着、現在では陽―大引の1、2番コンビが固まっている。木佐貫はローテーに入って6勝5敗。赤田は、一、二軍を行ったり来たりで、わずか13試合の出場に留まっている。対するオリックスでは、糸井が3番に定着して、打率.288、8本、33打点、17盗塁の結果を残しているが、八木は6月27日のロッテ戦に1試合先発したのみ(5回5失点で負け投手)で戦力になっていない。糸井の打線の前後に与えている影響力は絶大だが、日ハムで投打の2人が戦力になっていることを考えると、今季だけの短期で見れば、田中賢のメジャー挑戦などで抜けたチームのウイークポイントを埋めた日ハムが得をしたように思える。長期的に見れば、チームの不動の軸となる糸井を獲得したオリックスが、間違いなくお得なトレードだったのだが、メジャー志望の強い糸井にチームを早々に出ていかれてしまうならば、なおのこと日ハムに軍配か。日ハムは“二刀流”大谷の与えた効果も計り知れない。彼のピッチングとバットで5つ、6つはゲームを拾った。 ちなみにオリックスはストッパー候補の馬原をFA退団した寺原の人的補償でソフトバンクから獲得していたが、キャンプ中に肩を痛めて戦力になっていない。新外人のロッティーノは、打率2割をウロウロ。阪神からFAで復帰したユーティリティプレーヤーの平野も怪我などで、わずか12試合の出場。環境を変えて再起を期待された元巨人の東野も1勝2敗。ルーキーの松葉が3勝4敗、新外国人のディクソンが5勝3敗という好材料もあるが、動くだけ動いて大量補強に着手しながら結果につながらないという典型的な編成部の空回りパターン。 ソフトバンクは、FAで獲得した寺原、メジャーからストッパー候補として戻した五十嵐、暑くなって力が出てきてローテーで回り出したパティーヤらがプラス戦力となっている。また、打線では元メジャーのラヘアが、打率・234ながら、12本塁打、43打点と打線の重しになっている。横浜と行なった複数トレード(多村、神内、吉川=山本省、吉村、江尻)で来た山本、江尻は戦力にならなかったが、吉村は脇役として出番はもらえている。 パの補強ランキングのBクラス争いはロッテと西武である。 ロッテは巨人のゴンザレスを獲得したのみ。先発はわずか3試合で0勝1敗だから失敗だ。伊東監督は外からの補強ではなく、チャンスをもらえなかった若手登用という内部補強に動き、西野や鈴木を発掘した。補強がなく首位争いをしているのは立派のひとことで、大砲不足に悩んでいた打線に元阪神のブラゼルを期限ギリギリで緊急補強。すぐにエンジン全開で3号アーチを放つなど相手投手からすれば怖い大砲が加わった。阪神時代には統一球の影響がモロに出て不振に陥ったが、“飛ぶボール”に戻った今季はお買い得だったのかもしれない。ブラゼルの加入で補強ランキングではロッテは西武より上か。 西武も打線にスピリーを加え、広島からサファテを獲得しただけだったが、中島が抜けた穴を成長の著しい若手が埋めた。ロッテと似ていて、投手では菊池、野手では浅村と内部から眠っていた戦力が大ブレイクした。しかし補強検証で言えば下位となってしまう。若手育成を見越して、お金のかかる補強を控えたと見れば、経営者の目線ではトップランキングに位置するのかもしれない。補強によって若い芽を摘みたくないというビジョンは素晴らしい。これはスカウト部門の目利きとも連動する編成戦略であるが、ロッテ、西武でのイキイキしている若手の躍動を見ていると、補強に頼る野球観は考えもので、補強成否ランキングの下位にいて、チーム成績が上位にいるというチームが理想像ではないだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ)