補強に成功した球団はどこだ!
猛暑が少し和らいだ夏の清涼にプロ野球が前半戦を折り返した。 パ・リーグは楽天が球団創設初の首位Uターン。しかし、最下位のオリックスで借金3と、7.5ゲーム内で6球団ひしめきあうサバイバル戦の途中経過に過ぎない。一方のセ・リーグは、巨人が独走。背中を追うのは阪神だけというマッチレース。3位以下のチームは、対巨人から照準を置き換え、クライマックスシリーズ進出権を巡っての戦いになりそうだ。 さて原稿のスペースの関係上、細かくは、お伝えできないのだが、新戦力、補強の成否を検証したい。現在の順位とは関係なく独断と偏見でオフの補強の成否ランキングを考えてみた。 セ・リーグのベスト3は、現在の順位に比例するが、巨人、中日、阪神だろう。 巨人は、昨年オフに2つの複数トレード(オリックスと香月、阿南=東野、山本和、楽天と横川、井野=金刃、仲澤)を行なったが、どちらかと言えば「出場機会に恵まれない選手にチャンスを」という意図のトレードで、お得意の大型FA補強は行わず、ブルペン強化のためのアコスタ、野手では内野手のロペスがメインだった。アコスタは、肩を痛め開幕に出遅れたが、ロペスのコンパクトなスイングは日本野球向きで、5番を任され、打率.310でベストテン6位。11本塁打、29打点の数字は大成功だろう。現在、右脇端を痛め登録を抹消されているが、日本野球に対応できるかどうか当たり外れの多い外国人の中では“当たり”である。新人では制球力と、自在に芯を外すワンシームでローテーションに入った菅野が光る。ただでさえ、重厚な先発陣がさらに厚みが増した。大失敗のない堅実な補強だと思う。 中日は、ブランコらを失ったが、ルナ、クラーク、ブラッドリー、カブレラの4人の新外国人に揃って成功した。カブレラは4勝2敗、ブラッドリーは2勝2敗。ルナも前半の折り返し手前で戦線離脱してしまったが、堂々のセの首位打者で、得点圏打率は・441もあって12球団トップ。クラークも打率は低いが、13本塁打、36打点と存在感を示し、新外国人助っ人の活躍度で言えば、12球団を見渡しても楽天に次ぐ成功チームだろう。ブランコなどを輩出したドミニカルートを持っているのが中日の強みで、その窓口が巨人や西武で活躍して‘マルちゃん’と愛称で呼ばれたドミンゴ・マルチネス。マルちゃんの目利きが優良外国人を生み出している。 阪神はFAでオリックスから捕手の日高、海外から西岡、福留の凱旋に、新外国人のコンラッド。6月にはストッパー候補としてメジャー通算233試合登板のボイヤーを緊急獲得したが、看板倒れ。福留は故障で離脱、コンラッドはファームでも一時、打率1割台に低迷するなど使いものにならなかった。日高も、対榎田専門の女房役を務めるなど、プラス戦力になったが、成功したのは、西岡と高卒ルーキーの藤浪の2人だけ。ただ、2人は、投打にセンセーショナルな刺激を与えてくれたため、他の補強失敗を消し去ってくれた。GMの中村氏は、2人に感謝すべきである。西岡は調子に乗れば、どこまで行くかわからないという超ムラっけのある丁か半かのプレイヤーだが見事に吉に転んだ。 続くのは、ブランコ、ソーサ、ソトらの元中日勢を同一リーグから横取りした横浜なのだろうが、少々疑問符は付く。ブランコは確かに起爆剤となったが、チームの肝心の補強ポイントは投手陣だったはず。ソーサ、ソトに安定感がないのはわかっていた話で補強バランスが悪い。“巨人命”で浪人した菅野や、抽選となった藤浪は別にして、楽天の則本や、ヤクルトの小川の活躍ぶりを見ていると、即戦力投手を求めた現場に対して解答のできなかった横浜のスカウトは減給ものだろう。 ヤクルトも、岩村の楽天からの復帰や、新人・小川の大躍進はあったが、補強の成否で言えば合格点はつけられない。ミレッジ、バレンティンという軸がしっかりしているからだろうが、補強で、チームにさらなる追い風を吹かすことはできていない。限られた補強予算の問題で独自の路線を行く広島は、投手のソコロビッチには失敗、野手のルイスは、トップバッターという、役回りをなんとかこなしているが、なんと言っても光ったのは6月になって緊急獲得したキラだ。デビュー戦から3戦4本塁打と大爆発。すぐに手を痛めて欠場するなど、“忙しい”助っ人だが、もしかすると、超掘り出し物を探し当てたのかもしれない。