プロサーファー【五十嵐カノア】さん、重圧との向き合い方「安心できる場所があるから、負けるのが怖くない」|STORY
予想がつかないことが起こる…だからサーフィンそしてオリンピックは面白い
自分では、どのオリンピックも似ているのだろうと思っていましたが、東京もパリも全然違っていました。練習の仕方も、気持ちや背中にのしかかるプレッシャーも。サーフィンも成長しましたし、いい経験でしたね。パリオリンピックの結果は思ったほど良くなかったのですが、大会が始まる前からこれ以上準備できないと思うくらい100%の状態でいけたのは自分にとっては嬉しいことでした。特に今年のパリは波に左右され、海との戦いにもなり、面白いチャレンジでもありました。東京オリンピックは、自分の努力で結果を出さなきゃいけないという感じでしたが、パリでは、頭で考えてパフォーマンスに集中するよりも、波と同じリズムでいい波を探して面白いチャレンジをするという感じ。今年金メダルを獲ったのは地元の選手でワールドツアーにも入っていない選手…。それがサーフィンの凄さですよね。トップのサーファーじゃないけれど、いい波につながることで、得点できる、普通のスポーツでは考えられないことが起こるんです。2度のオリンピックの経験は僕に力を与えてくれたと思いますしパフォーマンスも上がりました。これを糧に、ロサンゼルスオリンピックへもチャレンジしていきたいですね。
自分のことを信じられるように、努力しておきたいんです
自分に負けそうなとき…まぁ、ありますよ(笑)。トレーニングも勉強も毎日やるのですが、朝5~6時に起きて、最初の5分は、きついなー、面倒だなーと感じます。やりたくないことだから今やっちゃおう!と動き出すと、すごく楽しくなってきます。つらいときこそ、今をちゃんと頑張らないといけないという気持ちが生まれるのかもしれません。前日に決めておいたスケジュールをこなしていくことが多く、このルーティンも、自分の自信につながる力になっているんじゃないかな。大会のとき、プレッシャーを感じたり緊張したりするときもありますが、その何日か前にサーフィンをやりたくない日でも頑張って準備を怠らなかった自分がいて。トレーニングもやりたくない日だって頑張って、いろいろ努力したのに、なんで今こんなに緊張しているの?と自分に問うんです。そうすると、そうだ、大丈夫!と思えて、良いパフォーマンスを発揮できるんです。だから、大事な日のために必ず努力をしたくなるんですね。その努力は実を結び、繋がっていくもの、そういう成功体験の繰り返しが自分を動かし、より高みに導いてくれるのだと思っています。 撮影/森脇裕介 ヘア・メーク/RYO 取材/竹永久美子