ラグビー経験わずか2年の17歳で日本代表候補も…W杯出場経験ナシ “イングランド戦で代表復帰”「消えた天才」山沢拓也(29歳)の魅力とは?
試合開始を控えてのメンバー紹介。山沢拓也の名前がアナウンスされると、国立競技場の4万4000観衆からどよめきと歓声が沸き起こった。 【写真で比較】「えっ、いまより全然細い…!」12年前、高校時代に日本代表候補に大抜擢の山沢の姿と現在のバッキバキなフィジカル…日本代表のイングランド戦の戦いぶりも見る 歓声には「え? ホントに?」という驚きのニュアンスも含まれていた。それも無理はない。山沢のメンバー入りが決まったのは試合が始まる僅か1時間ほど前。先発予定だったディラン・ライリーが体調不良で出場を取りやめ、リザーブだったサミソニ・トゥアがCTB13に入り、バックアップメンバーだった山沢がリザーブに繰り上がっていた。
苦戦のイングランド戦…リザーブ陣が躍動
山沢がピッチに入ったのは後半15分。その時点でスコアは3-38と日本が劣勢だったが、流れを変えたのがリザーブ陣だ。3-45とリードを広げられたあとの63分、自陣22m線に攻め込まれたところで途中出場の初キャップSH藤原忍が相手ボールをジャッカルしてPKを奪い速攻に出ると、パスを受けた山沢がゲイン。そこから攻め返した日本は65分、途中出場の初キャップFL山本凱が相手タックルをかわしてゴール前まで突き進み、LOワーナー・ディアンズの飛ばしパスを受けたWTB根塚洸雅がこの試合初トライ。 直後の69分にはハーフウェー付近からワーナーが大股ストライドで前進すると、猛然とサポートについたのが山沢だった。ワーナーからのパスを受けるとスピードをあげてイングランドDFを置き去りにし、そのままゴールポスト下にトライを決めるのだ。 試合後のミックスゾーン、リザーブ陣が流れを変えたね――記者たちのそんな問いかけに、山沢は首を振った。 「先発の選手たちがそれまでちゃんと日本代表のラグビーをしていたからこそ、途中から僕たちが入ったときにスペースが空いて、良いプレーをできたんです。自分じゃなく、リザーブの全員がチームに良い影響を与えることができたと思います」 あくまでも謙虚な言葉。決して自分を大きく見せようとしない。 そんな山沢のキャラクターを作ったひとつの要因が、12年前の夏の経験だ。 2012年の日本代表合宿に、就任1年目のエディー・ジョーンズHCは埼玉県深谷高の3年生だった山沢拓也を招集し、トンガ代表とのトレーニングマッチに臨んだジュニアジャパンに、17歳の山沢をリザーブで起用。前半35分からピッチに投入した。山沢はピッチに入った直後、相手キックを捕って良いカウンターアタックを見せたが、そのあとはこれという見せ場も作れずじまい。試合には24-45で敗れた。 「完全にビビりました」 試合後、17歳の山沢は言葉を繕うことなく正直な感想を口にした。相手はBKにも190cm、100kg超級が並ぶ巨漢軍団トンガ。 「怖かったです。デカかったです。試合中、ビビったまま、試合中に克服できず、パニックになったまま。良いプレーは全然できなかった。最後まで恐怖心を引きずったままでした」と告白した。 それから12年。山沢は、再び就任したエディー・ジョーンズHCによって日本代表スコッドに呼び戻された。29歳になった山沢に当時の記憶を訊く。 「あの頃は、周りの評価と自分の思う評価にギャップがありすぎました。とにかくラグビーのことを知らなすぎた。戦術のこともラグビー用語も、本当に知らないことだらけでしたから」
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