センバツ高校野球 東海大相模、誓いの勝利 投打の柱躍動 きょう決勝 /神奈川
第93回選抜高校野球大会第10日の31日、東海大相模は準決勝で天理(奈良)に2―0で勝利し、優勝した第83回大会(2011年)以来10年ぶりとなる決勝進出を決めた。4番の柴田疾(はやて)(3年)が決勝打となる適時打を放ち、エースの石田隼都(同)が2試合連続となる完封と、投打の柱が躍動した。決勝は大会第11日の1日午後0時半から、3回目の優勝をかけ明豊(大分)と対戦する。【宮島麻実、荻野公一、中田敦子】 「絶対勝て」。前夜、選手たちのスマートフォンに急性胃腸炎で入院した主将の大塚瑠晏(るあん)(3年)から無料通信アプリ「LINE(ライン)」のメッセージが届いた。選手はそれぞれ「勝つぞ」などと返信した。 エースの石田は、この日も相手のスコアボードに次々と0を並べた。中1日での先発となったが、疲れを見せずに3安打、15奪三振という圧巻の投球を披露。4試合で26回を投げ無失点という離れ業でチームを決勝まで導いた。 唯一、得点圏に走者を置いたのが六回。二塁打と暴投で1死三塁となった。1人打ち取ったところで、伝令の黒澤学励(同)が「ほっとするな。次も攻めろ」と門馬敬治監督からの指示を伝えた。その言葉通り、石田は次の打者を3球三振にうちとり、仲間と笑顔でグラブタッチした。 打線は幸先よく一回に先制した。先制ホームを踏んだのは、準々決勝と同じ綛田(かせだ)小瑛(同)。準決勝も安打に犠打と2番の役目を果たした。スタンドで見守った母、昌子さん(44)は「よく打ってくれた。主将が抜けた穴は大きいが、みんなで勝つ、つなぐという気持ちが伝わってきてうれしい」と喜んだ。 先制適時打を放った4番の柴田の父、徹さん(53)は「いいところでよく打った。打てると乗ってくる子。次は長打を打ってほしい」。柴田は八回に二塁打を放ち、父の期待に応えた。 10年ぶりとなる決勝進出を決めた瞬間、スタンドでは野球部員や保護者が立ち上がり、メガホンをたたいてどっと沸いた。 攻守の要の主将不在という危機を、選手たちは結束して乗り越えつつある。小島大河(3年)が選手たちの思いを代弁する。「大塚がいないのはダメージが大きいが、みんなが一人一人ちょっとずつ頑張ってやっていこうと言っている。大塚には日本一を届けたい」 ◇マネジャー歓喜 〇…青色のメガホンが揺れる三塁側アルプス席では、マネジャーの吉沼瑠夏(るな)さん(3年)が、選手たちの活躍を見守った=写真。2017年夏の県大会決勝戦を見て東海大相模のファンに。20年は新型コロナの影響で春夏の甲子園が中止になり、悔しがる先輩の姿を見てきた。現チームのセンバツ出場が決まると、選手らと「全員そろって日本一目指そうな」と約束を交わした。勝利に沸くスタンドでは、野球部員らとメガホンをたたき合い「うれしい、最高です」と喜びを爆発させていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇悩める4番が決勝打 柴田疾内野手(3年) いきなり好機で打順が回ってきた。一回2死二塁。「初回に絶対、点を取りたかった。食らいついてしぶとく打とう」。2球目の直球を振り抜くと、痛烈な打球が三遊間を抜けた。二塁走者が生還したのを確認すると、塁上で笑顔を見せた。 1、2回戦ではチームで計4得点と打線が振るわず、自身も1回戦の1打点のみ。「自分の前に作ってくれた好機を壊してしまっている。4番として何もできてない」と苦しんでいた。 この試合では「長打を狙わず、コンパクトに後ろにつなぐ」ように修正すると、いきなり適時打。八回にはフェンス直撃の二塁打を放ち、狙っていないはずの長打も飛び出た。 4番として心にとどめているのは「とにかくフルスイング」。1学年上の西川僚祐さん(現ロッテ)がくれたアドバイスだ。毎晩寮で一緒に素振りをしていた先輩の教えを実践してきた。 頂点まであと1勝。悩める主砲に当たりが戻った今の東海大相模に、怖いものはない。【宮島麻実】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽準決勝 東海大相模 100000001=2 天理 000000000=0