<リオ五輪>日本の大金星の背景に7人制ラグビーの競技特性
リオデジャネイロで初めて五輪の正式種目となった五輪7人制ラグビー男子の部で、いきなり波乱が起きた。日本代表が、金メダル候補のニュージーランド代表を14―12で倒したのだ。 世界のトップが集うセブンズワールドシリーズにあって、日本代表はチャレンジャーの立ち位置にいた。2015年には、ワールドシリーズの大会に常時参加できるコアチームから降格していて、ニュージーランド代表は、そのコアチームの上位を争うラグビー王国である。この構図のもと挑戦者が勝てば、間違いなくジャイアントキリングとされよう。 この国のラグビーの下剋上と言えば、昨秋のワールドカップイングランド大会での一戦が印象深い。過去優勝2度の南アフリカ代表から、ジャパンが同大会24年ぶりの白星を挙げたのだ。9月19日に行われたゲームの会場にちなみ、その瞬間は「ブライトンの奇跡」とも謳われた。今回の大活劇は、「一貫した努力に諸条件が重なった」という意味ではワールドカップのそれと共通している。 もっとも、違った色を放っているのも事実だ。「7人制の醍醐味の結晶」という、もうひとつの色である。 あくまで比較論だが、15人制より7人制の方が番狂わせの起こる可能性は高い。 40分ハーフの計80分のゲームをおこなう15人制に対し、7人制は7分ハーフの計14分で雌雄を決す(決勝戦のみは10分ハーフの計20分)。 だからだろう。リオデジャネイロで男女代表のコーチングを手伝う岩渕健輔・日本代表チーム ゼネラルマネージャーは、この夏に出た『7人制ラグビー観戦術 セブンズの面白さ徹底研究』(野澤武史著/ベースボール・マガジン社)の対談でこう語っている。 「15人制で『強いチームは75分になっても焦らない』と言うじゃないですか。しかし、77分になったら焦りますよね(笑)。セブンズ(筆者注・7人制)の場合はこの77分がすぐにやって来るわけです。いくらセブンズは10秒で点を取れるといっても、焦ればうまくいかない」 事実、あっという間にノーサイドの時が来る7人制のゲームでは、準備万端で臨むチャレンジャーが大物を倒すシーンが少なくない。 今季のセブンズワールドシリーズで、わかりやすい事例があった。 4月16、17日にシンガポールであった第8ラウンドで初優勝したのは、中位勢を占めるケニア代表だった。 この時ニュージーランド代表も圧倒したケニア代表は、決勝戦では後に総合ランキング首位で終えるフィジー代表を30―7で下した。日本代表が12位に入る15人制の世界ランクでは24位と振るわないものの、7人制の世界では希少な台風の目。広大なスペースを瞬時に突っ切る走者を、数多く揃えていた。 岩渕は、2010年に自身監修の7人制関連本を作る際も、日本ラグビー協会のハイパフォーマンスマネージャーの立場でこんなことを話していた。 「現場の人間として言うべきことではありませんが、15人制の日本代表がすぐにオールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)に勝つことは難しいと思います。ただ、試合時間の短いセブンズではそれをする可能性が十分にある」