<リオ五輪>日本の大金星の背景に7人制ラグビーの競技特性
短い試合時間を勝利に繋げる方法のひとつには、「ずっとボールを持ち続ける」がある。 7人制では、得点を取った側が自軍ボールのキックオフを蹴ることができる。スコアした側が、すぐに敵陣へ入れるのだ。15人制では、得点を取られた側がキックオフを蹴る。 さらに7人制には、15人制と同じ広さのグラウンドを使うのに、プレーする人数はその半分以下という特徴がある。キックオフの権利を持った側が蹴る方向へばねのある味方を走らせれば、「ずっとボールを持ち続ける」まま試合を運べることとなる。 相手だってその実相を知っている分、現実的にそれを具現化するのは難しい。ただ、15人制より自軍ボールキックオフを確保しやすいのは間違いなかろう。岩渕は、監修本の制作時にこんな意見も出している。 「例えば、ど真ん中に蹴って長身の選手を走らせれば…。もちろん、相手もそれを読んで長身選手を競らせることはありますが、ここからは駆け引きです」 ニュージーランド代表を破った日本代表は、試合開始早々のキックオフを桑水流裕策らが身を挺して確保。羽野一志のビッグゲインなどで、波乱の序章を奏でた。 守りに回った折は、相手の突破力を最小限に止めた。2人がかりでランナーを挟み撃ちにし、すぐ起き上がる。向こうの援護が来る前に球へ絡む。その繰り返しで、しばしば相手の反則を誘った。 再び攻めに転じれば、「ずっとボールを持ち続ける」を自分たちなりの手法で体現。ランナーが隙間をえぐりながら極力、接点を作らない。前後左右どこかしらのスペースをチーム全体で共有し、なるべく複数人が固まっている場所へ球を運ぶ…。副島亀里 ララボウ ラティアナラのトライなどで勝ち越したシーンは、その青写真通りの流れだった。 その後はイギリス代表に19-21と競り合った日本代表は、大会初日を1勝1敗で終えた。翌10日には、ケニア代表との予選プールC最終戦に臨む。 3組のプールから8チーム(各組2位以内の計3チームと、各組3位チーム中上位の計2チーム)が進める決勝トーナメントでプレーするには、着実に白星が欲しいところだ。 今大会2連敗中のケニア代表だが、4月のシンガポールでは頂点に立っている。そもそもセブンズの世界では、日本代表よりケニア代表の方がより存在感を示してきている。番狂わせが多いとされる戦いにあって、いっそう油断は禁物だ。 (文責・向風見也/ラグビーライター)