1%の従業員の睡眠改善で離職率が0.02%低下…日本企業1784社対象の研究
【役に立つオモシロ医学論文】 うつ病や不安症など、メンタルヘルスの問題を抱えている人は、全世界で約9億7000万人に上ると推計されています。日本においても、生涯を通じてメンタルヘルスの問題を経験する人は、人口の約2割に上るとの報告もあります。 「夜型」の人は無理に「朝型」にシフトしないほうがいい 病気や死亡リスクが上昇する メンタルヘルスの問題は、医療費負担や休業に伴う賃金の損失だけでなく、仕事の効率や生活の質を低下させる原因となります。また、労働者のメンタルヘルスが悪化することは、離職率の上昇と関連することが知られており、企業における従業員の健康管理は重要な経営戦略のひとつとして位置付けることができます。そのような中、日本企業における労働者の生活習慣と、メンタルヘルスの問題による欠勤や離職との関連性を検討した研究論文が、公衆衛生学に関する専門誌に、2024年8月2日付で掲載されました。 この研究では、経済産業省が実施している健康経営度調査のデータから、日本企業1748社に勤務する419万9021人が分析対象となりました。喫煙や飲酒、運動、睡眠時間などの生活習慣が調査され、メンタルヘルスの問題と関連した欠勤や離職との関連性が評価されています。なお、解析結果に影響を与え得る業種、勤続年数、生活習慣などの因子について、統計的に補正が行われています。 その結果、睡眠状態が良好な従業員の割合が1%増加すると、離職率が0.02%低下し、メンタルヘルスの問題に関連した欠勤が0.05%低下することが示されました。また、定期的な運動をしている従業員の割合が1%増加すると、メンタルヘルスの問題に関連した欠勤が0.05%低下することもわかりました。 論文著者らは「睡眠と運動は、従業員のメンタルヘルスを促進する上で重要な役割を果たしている」と考察しています。 (青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)