【熊沢重文さんの調教診断】併走馬に隠れるドウデュースに衝撃、有馬記念連覇へ「抜かりなし」目についた3歳馬の名前も
連覇へ仕上がりは太鼓判―。平地、障害の二刀流騎手として活躍し、土曜は本紙の紙面でG1、障害重賞の予想「競馬しようぜ!」でおなじみの熊沢重文さん(56)が「第69回有馬記念」(G1・22日・中山・芝2500メートル)に出走する16頭の調教を診断した。関西馬は栗東トレセンで実際に見て、関東馬は映像でチェック。ラストランとなるドウデュースの重心の低い走りを高く評価した。菊花賞馬アーバンシックの仕上がりも上々と判断。ダービー馬ダノンデサイルの動きの良さにも注目した。 ◆熊沢ダイユウサクと武豊メジロマックイーンの有馬記念【写真】 ヒーローが有終の美を飾る大団円に向けて、抜群に動いているのをこの目でしっかり見てきました。ドウデュースの栗東Pコースでの併せ馬です。 首の使い方が独特な馬ですよね。頭を前へ前へと持っていって推進力を引き出しています。首を伸ばす分、ストライドが広がって、1完歩あたりに進む距離が稼げます。体のバランスがいいからこそ、これだけ首を遠くまで伸ばせて、前の膝も高く引きつけられるんでしょう。 もう一つの特徴が重心の低さ。栗東にはスタンドが2つあって、僕は障害騎手の集まる部屋のある低い方のスタンドの2階から見たのですが、2階と言ってもPコースやCWコースで併走している内の馬が完全に隠れてしまうことはそうそうありません。ドウデュースは500キロを超える馬で、サイズは大きい方ですが、それが併走馬の影にそっくり隠れてしまうところがありました。飛び抜けて重心が低くて走りが安定しているのです。 仕上がりも抜かりありません。連戦できている分のケアも必要でしょうが、先週もしっかりやれていました。この秋はすごく落ち着きがあって乗りやすそう。人間と馬の意見が一致していて、人の組み立てたメニューを順調にこなせているから、1戦あたりの消耗も少なく運んできているのだと思います。 ユタカ(武豊)の口ぶりも自信がありそうでした。「何もなく来られているのが何より」と、字にしてみると素っ気ない感じです。でも、むしろ彼はあえてべた褒めしている時に良くないことが紛れ込んでいるんですよ。馬も人も平常心で迎えられるのが何より。今は本当に自信のある時のユタカですよ。 もう1人、ものすごく自信を持っている感じなのがルメール。アーバンシックの調教はVTRの観察でしたが、手応えが引っ張りきりで、身のこなしも柔らかでした。それで「勝つ自信があります」とは、背中の感触がよほど良かったんでしょう。特に、今年はいいときを乗ってきているはず。お飾り付けてしゃべる人ではないですからね。 攻め馬を良く見せた馬にはダノンデサイルも挙げておきたいです。今週はさらっとですが、順調に来ています。時計は手控えても大きく動かしています。十分負荷はかかっています。 ジャスティンパレスは使われてきていますが、調教パターンを変えず、順調です。雰囲気は落ち着きもありますし、脱力した感じでもないです。調教から戻ってきた時もしっかり歩けていました。 最後にディープボンド。決め手勝負になった時に対応できるかどうかという課題はありますが、上手に調整されてずっといい状態をキープしています。栗東CWでの単走ですが、バネの利いた伸びやかな走り。7歳で有馬記念はもう4回目になりますが、いつも通り攻め馬を良く見せていました。
中日スポーツ