過疎進む林業の町を「巨大テーマパーク」に 2つの谷を越えて空を滑る
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町の面積の92%を森林が占める福井県池田町。主産業だった林業の担い手が近年は激減し、過疎化が止まらないこの町に、日本最大の“冒険の森”がオープンした。山林の中に突如出現した新しいレジャー施設は、地域創生の切り札になるか。 小学生が市議会に陳情「自由に遊べる場所作って」議論の結果は?
町長の発案で始まった町おこしプロジェクト
ハーネス(安全ベルト)が腰と肩にしっかり固定されているのを確認し、正副2つのフックをワイヤーに掛ける。これで準備が完了。インストラクターの「3、2、1、ゴー!」の合図とともに踏み台から足を離し、身体を宙に投げ出した。ワイヤーを伝う滑車の回転数が増し、広大な森の風景が眼下で勢いよく流れていく。鳥になった気分だ。 「ツリーピクニックアドベンチャー いけだ」──福井県池田町の山林に2016年4月27日に出現したこの冒険の森に、県外からも多くの人が詰めかけている。その目玉として人気を集めるのが、山の尾根と尾根のあいだにワイヤーを張り、滑車を使って滑り降りる「メガジップライン」だ。2つの谷を越えて滑走する距離は、往路が480メートルで復路510メートル。最も高い地点で地上高は60メートルあり、池田町の調べでは国内の同様なアトラクションと比較して距離・高さともに日本一だという。
発案者は杉本博文町長だ。池田町の特徴である森や木を活かした町おこしの一環として、3年前にプロジェクトを始動。広大な敷地内にはメガジップラインのほか、大自然の中で満喫できるアスレチックやスリルある川下りを体験できるラフティングなどのプログラムも用意された。
シェアハウスで生活する県外から移住者たち
現地で取材に応じてくれたオペレーションマネージャーの野村俊治氏は「オープンして約1カ月半が経過し、すでに6,000人の来場がありました。年間目標を5~6万人に定めているので、まずは順調な滑り出しといったところです」と話す。運営スタッフは現在、正社員とアルバイトを含めて33名。その半分は県外から来た若者たちだそうだ。 「林業の町としてかつては7,000人が生活していた池田町の人口が、現在は2,600人にまで減少しています。とくに若い人の県外流出が止まりません」と野村氏は続ける。「雇用の機会を増やし、若い人を呼び寄せることも、この施設の大きな狙いなんです」