過疎進む林業の町を「巨大テーマパーク」に 2つの谷を越えて空を滑る
Uターン組のほか、北海道や関東から移住してきたIターン組も少なくない。宇都宮大学を卒業してツインリンクもてぎなどで働いていたというディレクターの板谷洋介氏は「町を取り囲む森の見事な自然に惚れ込みました。ここで骨をうずめるつもりです」と決意を口にする。歩いて15分ほどの場所に最近、空き家を改装した従業員のためのシェアハウスも完成した。以前は工場の技師だったという人や、役所勤めだった人、塾の先生やトラックの運転手など、レジャー施設での仕事は未体験という人も多い。草刈りの講習を受けたり、救命の資格を取るための勉強を続けたりしながら、みんなで意見を出し合って運営を進めている。
今後はリピーターをいかに増やしていくかが、成功への鍵になるだろう。その点について野村氏は「先日は83歳のおばあちゃんがジップラインを楽しんで行かれました。また絶対に来たいと言ってくれて、スタッフたちは大喜びです」と笑みを浮かべる。夏場は集客が見込めても、では冬場はどうなのか? 「アイデアはいろいろ出ています。雪深い森の中で“かまくら遊び”ができないか、スノーシューを履いての森林ツアーはどうかなど。真冬にジップラインで飛ぶというのも、いいかもしれません」 なるほど。体験した私自身も、いずれ再び鳥になって、次回は雪山の景色を楽しんでみたいと思う。半年後にまた取材を兼ねて再訪したい。 文=秋本俊二(作家/航空ジャーナリスト) 写真/映像=倉谷清文(フォトグラファー)