糖尿病薬で“老化細胞の除去”に成功! フレイル改善・寿命延長効果もマウス実験で確認 順天堂大
順天堂大学らの研究グループは、「マウスに糖尿病治療薬を投与したところ、加齢に伴って蓄積される老化細胞を除去する効果を発見した」と発表しました。この内容について中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております。]
研究グループが発表した内容とは?
編集部:順天堂大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。 中路先生:今回紹介する研究は順天堂大学らの研究グループが実施したもので、研究結果は学術誌「Nature Aging」に掲載されています。 研究グループは、「カロリー制限によって寿命が延長すること」と「カロリー制限によって寿命が延長した個体では加齢に伴う老化細胞の蓄積が抑制されていること」の2つの観点に着目して今回の研究を実施しました。 研究グループは、肥満状態になったマウスに対して、尿への糖の排出を促進することで血糖を低下させる糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」の投与を1週間おこないました。 その結果、内臓脂肪に蓄積した老化細胞が除去されるとともに内臓脂肪の炎症が改善し、糖代謝異常やインスリン抵抗性の改善がみられました。一方で、肥満マウスに対して短期間のインスリン投与で高血糖を改善しても、内臓脂肪に 蓄積した老化細胞は除去されず、内臓脂肪の炎症も改善しませんでした。こうした結果から「SGLT2阻害薬による老化細胞除去効果は、血糖値の改善とは関連なく、特有の効果である」という結論が導かれました。 また、SGLT2阻害薬の投与によって、加齢に伴うフレイルの改善や早老症マウスの寿命の延長などを観察することもできました。
研究がおこなわれた背景は?
編集部:今回の研究がおこなわれた背景について教えてください。 中路先生:加齢や肥満などの代謝ストレスによって、生活習慣病やアルツハイマー病などの加齢関連疾患が発症・進展することが知られているものの、その仕組みはよくわかっていなかったことが研究の背景として挙げられます。 研究グループはこれまで30年以上、加齢に関連する疾患の発症メカニズムについて研究を進めてきて、加齢やストレスによって組織に老化細胞が蓄積され、その結果引き起こされた慢性炎症が、加齢に関連する疾患の発症・進展に関わっていることを明らかにしています。 最近では、蓄積した老化細胞を除去する「セノリシス」で、加齢関連疾患における病的な老化形質を改善し得ることが示されています。しかし、これまで報告されている老化細胞除去薬は抗がん剤として使用されているものが多く、副作用の懸念がありました。 研究グループは、より老化細胞に作用し、副作用の少ない治療法の開発を目指して研究をおこなう中で、SGLT2阻害薬を用いた実験にたどり着きました。