飲料メーカー2社、AIサービスを導入し輸送量平準化を推進、キリンビバレッジ・アサヒ飲料
キリンビバレッジとアサヒ飲料は10月29日、HacobuとJDSCが開発した輸送量の平準化を実現するための生産・販売・在庫管理サービス「MOVO PSI(ムーボ・ピーエスアイ)」を11月1日から導入すると発表した。キリンビバレッジとアサヒ飲料は「MOVO PSI」の導入を拡大することで、自社における輸送の積載率向上やコスト削減および納品時の欠品率低減を推進し、持続可能な物流インフラの構築に向けた取り組みを加速していくとした。
「MOVO PSI」は、メーカー・卸売業・小売業の企業間をつなぎ、PSI(生産・販売計画・在庫)情報を管理・共有・分析するプラットフォームだ。2つのAIモデルを搭載しており、1つ目は卸売業や小売業からの受注を予測し、在庫の変動を正確に把握するもので、2つ目は日々の輸送量を平準化するため、膨大な組み合わせの中から最適なパターンを計算し、現場の実務を支援するものだ。このシステムを通じ、各企業は日々のデータにアクセスし、余剰在庫や欠品を防ぎつつ在庫量や輸配送量を最適化することができるという。「MOVO PSI」の導入により、輸送コストの削減や在庫効率の向上、欠品率の低減が見込めるほか、企業間をまたいだ連携により、社会全体の輸送効率向上を推進できるとした。 2024年4月からトラックドライバーに「働き方改革関連法」が適用されたことによる「物流の2024年問題」や、2023年6月に政府が発表した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」で「発注量および発送量の適正化」が推奨されるなど、業界全体で対応が求められている。
一方で、サプライチェーンでは、欠品を恐れて必要以上の量を揃えようとする傾向にあるため、店舗(小売業)での急な需要増加が、卸売業を通じてメーカーに伝わる過程で、実際に必要な量よりも大幅に増えてしまう「ブルウィップ現象」により、各段階で過剰な在庫や不必要な輸送が発生し「ムリ・ムラ・ムダ」を生んでいるという。 特に飲料業界では、セールや季節、天候により需要の変化が予測困難で、欠品のリスクを避けるために在庫を多めに抱える傾向にある。その結果、メーカーや卸売業において余剰在庫の発生や効率的な輸送の手配が困難となり、課題がさらに複雑化しているという。そうした課題に対応するため、Hacobuは輸送量の平準化や輸送車両台数、在庫数の削減を実現する「MOVO PSI」を開発した。 キリンビバレッジは2021年に、Hacobuと共同で「輸送量平準化 共同プロジェクト」を開始した。キリンビバレッジのVMI拠点での実証実験では、約9.1%の輸送コスト削減に加え、在庫日数では約13.2%の削減効果が確認できたとしている。キリンビバレッジ執行役員SCM部長の掛林正人氏は、「多くの困難があったが、経営課題である物流問題に対する取り組みを大きく進めることができた。まずはメーカーの立場で実際に利用することで成果を実現させ、展開を拡大することで社会最適の実現につなげていきたい」と語った。 アサヒ飲料は2023年から同プロジェクトに参画しており、実証実験では特定の配送センターへの輸送コストを約6.2%、在庫日数を約6.5%削減できたという。アサヒ飲料執行役員SCM本部長の和田博文氏は、「今回の取り組みを通じて、サプライチェーンに携わる仲間の笑顔がまた1つ増えることを大いに期待している。このような共創・協業の取り組みを拡大することで、業界を超えてスマイルチェーンを広げていきたい」と話した。 Hacobuによると、今後はキリンビバレッジとアサヒ飲料での利用を開始すると同時に、他メーカー(発荷主)や卸売・小売(着荷主)へと案内を進め導入拡大を図るという。Hacobu執行役員の佐藤健次CSOは、「発注・発送の最適化をさまざまなデータを活用して達成し、来るべき物流問題に対応できる体制を日本で整備していきたい」と語った。
食品産業新聞社