パリ五輪で野球が見られない理由【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第125回
パリ五輪、盛り上がってますね。個人的に見たい試合が夜中に続き、仕事に支障をきたしそうなので泣く泣く自制することも。ニッポンはもちろん、世界各国のアスリートたちの晴れ舞台に涙腺を緩ませております。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー ところで、東京五輪で侍JAPANが金メダルを獲得した野球は、同大会が開催される前に、パリ五輪では実施されないことが発表されました。その理由のひとつに、残念ながら「野球はフランスで人気ないから」ということがあると思います。 そもそも五輪には正式種目と、追加種目があります(詳しい方は釈迦に説法でしょうが、ご辛抱ください)。2021年の東京五輪から、追加種目を提案する権限が開催国に与えられるようになりましたが、パリ五輪ではスポーツクライミング、サーフィン、スケートボード、ブレイキンの4種目が追加されました。 これらは、次回の五輪でも実施されるかどうかは関係ありません。次回の2028年ロサンゼルス五輪では、スポーツクライミング、サーフィン、スケートボードは行なわれますがブレイキンは外れました。そして追加種目として、野球・ソフトボール、クリケット、ラクロス、スカッシュ、フラッグフットボールの5競技が採用されることが決まっています。 開催国が追加したい種目は、端的に言ってしまえば「その種目でメダルが狙えるかどうか」だと思います。国民にまったく縁もゆかりもないスポーツを追加するメリット(という言い方は無粋ですね)はないわけで、そうなると、自国で開催することで大きな注目を集めるスポーツを追加することがセオリーです。 大きな注目を集める=強い、と言い換えてもいいでしょう。つまり、フランスでは野球が盛んでなく、残念ながら人気が高くないということなのです。
東京五輪では野球が追加種目に選ばれました(そのほかにソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィン)が、実は野球が五輪で見られる機会はそう多くありません。 なぜ、野球が選ばれないか。それには、2つの大きな理由があるそうです。 理由1)野球人気が根づいていない国で、そもそも球場施設を作ることが困難 理由2)試合が長く、単期間の興行としての魅力に欠ける 実際に、東京五輪の野球に参加したチームはわずか6カ国でした。 パリ五輪を見ていて驚いたのが、フランスでの柔道人気の高さです。各階級に実力がある選手を揃え、日本勢がタジタジになるシーンも見られましたが、フランスにおける柔道の競技人口は日本の約4倍もいるのだとか。もしかすると、フランスでは大谷翔平選手より、阿部兄妹のほうが有名なのかも。ちなみに、世界で最も柔道人口が多いのがブラジルで、日本の10倍以上とされています。 世界規模で考えると、野球人気はそれほど高くありません。この連載の担当さんのお友達は、留学先のイタリアで草野球をしていたところ、チームにスカウトされてそのままプロ野球選手(セリエA)になってしまったそうです。マイナースポーツという扱いをされている国のほうが圧倒的に多い、という寂しい現実があります。五輪でないと熱心に見ない競技がありますが、世界における野球もそのひとつなのかもしれません。 アメリカでは人気なので勘違いしそうになりますが、野球だって世界的にはマイナースポーツ。しかし、五輪のおかげでそのスポーツの面白さを知り、実際に始めてみようと思う若者もきっといることでしょう。ボールひとつでできるサッカーには、裾野では敵わないかもしれないけれど、次回のロス五輪で少しでも多くの人に野球の魅力を知ってもらいたいです。 次のロス五輪の侍JAPANに思いを馳せながら、今宵もパリで躍動する世界中のアスリートに声援を送りたいと思います。頑張れみんな。それではまた来週! 構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作