東京都が主導する「マッチングアプリ」“成婚格差”拡大の恐れも? 2年間で約5億円の予算「結婚支援事業」の効果とは
石丸元市長「結婚支援は価値観の押し付け」
そもそも、未婚化や少子化の原因は、必ずしも「出会いの機会の少なさ」とは限らない。経済的な不安や子育て支援制度の不足、価値観の変化により「独身でも構わない」と考える男女が増えたことなど、さまざまな要因が考えられる。 6月に小池百合子・東京都知事は「都は、希望する誰もが結婚し、子供を産み育てられるよう、出会いから結婚、出産、子育てまで、シームレスに支援している」(6月10日「結婚おうえん TOKYOミーティング」)と語ったが、アプリを含む結婚支援事業にどれほどの効果があったのか、他の施策との比較なども含めて検証が必要だろう。 また、長門氏は、結婚を支援するための施策が「結婚して子供を持つことが当たり前」「結婚をしていない人には欠陥がある」などの観念の強化につながる可能性を懸念する。 2023年、三重県伊賀市は、「『結婚して子供を産む』という日本の古い価値観を、国や自治体が押し付けるべきではない」「性的少数者への配慮も欠けていた」として、7年間続けてきた民間事業者による婚活イベントへの補助を打ち切った。 前出の石丸元市長も、結婚支援事業を廃止した当時に「少子化対策としての結婚推奨は、結婚できない人、子供が持てない人を苦しめます。LGBTの方々へも配慮が足りません。そういった価値観の押し付けで、子や孫が田舎に寄りつかなくなっています」とコメントしている。
「疑似科学」が行政に侵入する恐れも
長門氏は「AIや行動データを活用してマッチングを最適化した」と謳うサービスを自治体が導入していることにも注意を払う必要がある、と指摘する。 「若者を中心に流行している性格診断や相性診断のなかには、心理学的な根拠のないものが少なくありません。 こうした機能を実装したアプリを自治体の名前でリリースすることは、行政に疑似科学的なものの侵入を許すことにつながりかねません。 また、婚活のなかで収集されるデータは個人の重要なプライバシーにかかわることも少なくなく、流出や目的外利用への対策など、事業者へのチェックも求められるでしょう」(長門氏)
弁護士JP編集部