カズの移籍をブラジルメディアはどう報じたか。驚くベテラン記者はキング・ペレを引き合いに出して「疑問」を【現地発】
「日本のキングはなぜ(プレーが)可能なんだ?」
6月25日、カズこと三浦知良が保有権を持つ横浜FCからJFLのアトレチコ鈴鹿(旧鈴鹿ポイントゲッターズ)に期限付き移籍したニュースは、その日のうちに地球の反対側にあるブラジルでも盛んに報じられた。 「サントスでもプレーした日本のレジェンドが、57歳にして新たなクラブと契約を結んだ」(リオの有力日刊紙『グローボ』) 「ほぼ60歳! 世界最年長選手が新クラブと契約を締結」(情報サイト「iG」) さらに、「1985年末、わずか15歳でブラジルへと渡り、中小クラブで武者修行をした後、サントス、コリチーバなどでプロとして活躍した」、「1990年に母国へ戻り、93年に創設されたJリーグの最大のスターとなってキングと呼ばれた」、「日本代表にも選ばれ、98試合に出場して55得点を記録した」、「イタリア、クロアチアのクラブでもプレーした」、「23年1月からは、オリベイレンセ(ポルトガル2部)でプレーしていた。これから38年目のシーズンを迎える」などとキャリアを紹介。アトレチコ鈴鹿の入団会見における「フットボールを辞めるという選択肢はない」という本人の言葉も伝えている。 【PHOTO】“世界一美しいフットボーラー”に認定されたクロアチア女子代表FW、マルコビッチの厳選ショットを一挙お届け! ブラジルでカズに関するニュースが報じられるのは、今回に限らない。彼がブラジルに「里帰り」した際は、その動向を複数のメディアが伝える。また、鈴鹿ポイントゲッターズ在籍中の2022年11月にJFLのリーグ最年長得点記録を更新し、またオリベイレンセでポルトガル2部のリーグ最年長出場記録を更新した際なども逐一、報道された。 とはいえブラジルメディアも、カズのプレー時間が近年激減していて、オリベイレンセに在籍していた1年4か月の間、得点もアシストも記録できなかったことは知っている。 私はあるベテラン記者から、「ブラジルでは、どれだけ偉大な経歴を持つ選手であろうと、年を取ってパフォーマンスが低下すれば、プロとしてプレーできなくなる。たとえキング・ペレであろうとね。どうして日本のキングはそれが可能なんだ?」と疑問をぶつけられた。 「58歳のロマーリオも、自身が会長を務めるアメリカでリオ州リーグ2部の選手登録をしたよね」(7月上旬時点で未出場) そう返すと、彼は苦笑していた。 文●沢田啓明 【著者プロフィール】 1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。