KDDI傘下のELYZAがJR西日本とタッグ。月間7万件の「客の声」をAIで分析
AIスタートアップのELYZA(イライザ)は12月3日、大規模言語モデル(LLM)を用いてコンタクトセンターの高度化支援に本格参入すると発表した。 【全画像をみる】KDDI傘下のELYZAがJR西日本とタッグ。月間7万件の「客の声」をAIで分析 企業のコンタクトセンターに寄せられる顧客の声(VoC、Voice of Customer)の分析などを支援する。 そして、JR西日本カスタマーリレーションズ(以下、JWCR)のコンタクトセンターでは、ELYZAのVoC分析パッケージの実運用が今回新たに始まった。
2025年中の提供を目指す新プロダクト
ELYZAは、東京大学松尾研究室発のAIスタートアップとして2018年9月に設立。2024年4月からはKDDIの連結子会社になった。 生成AIの研究開発に取り組むELYZAは、東京海上日動火災保険や損保ジャパン、三井住友カードなどの企業とタッグを組み、生成AIの業務効率化に取り組んできた。 今回ELYZAは、コンタクトセンターに特化したLLMプロダクト「ELYZA for Contact Center(仮称)」の概要を公表した。 企業と顧客のやり取りの内容を要約、膨大な件数の問い合わせデータを横断的に分析して、コンタクトセンターのオペレーションを支援する。 現時点では概要の公表に留まり、商品としての提供開始時期は調整中。しかし、ELYZAの曽根岡侑也CEOは「2025年中にはプロダクトとして社会に出したい」と意気込む。 企業によって異なるコンタクトセンターのオペレーションに合わせ、チューニングや導入支援も含めた提供を想定。オペレーターの利用者数の目標として、まずは1万人を目指す。
「顧客の声」の分析は次のステップへ
ELYZA for Contact Centerはあくまでプロダクトの構想に過ぎないが、その一部になる機能は、すでにJWCRで実運用が始まっている。 JWCRが運営する「JR西日本お客様センター」には、一日に電話の問い合わせが約2200件、メールが約290件届く。そのうち、意見や要望は全体の3%にあたる約75件。 JWCRではこうした問い合わせへの応対履歴を、すべて要約・テキスト化して保存している。その件数は月間約7万件になる。 しかし、要約を作成するオペレーターや、内容を確認するスーパーバイザーの負担が大きいことが課題となっていた。 そこでJWCRは2022年からELYZAと連携を開始し、生成AIを用いて業務の効率化を推進してきた。 例えば「要約AI」の導入により、従来と比べて1件あたり65秒の作業時間を削減。意見や要望の要約に限定すれば、1件あたり230秒の作業時間を削減できているという。 そうして要約したデータはVoCとして分析するが、従来は工数の制約などもあり、分析対象は月間の7万件のうち一部のデータに限られていた。 しかし、今回新たに実運用が始まったELYZAのVoC分析パッケージにより、すべての問い合わせデータを分析対象にできるようになった。より多くの顧客の声を拾って可視化し、事業の改善に役立てる。 JWCRの堤恵理子社長は「JR西日本の経営層から『顧客の声に向き合う企業文化の醸成に有用で、期待している』という感想があった」と語り、期待感を示す。
松本和大