ソニーミュージック、“芸人×障害当事者”の「実証実験ライブ」開催 ”エンタメのアクセシビリティー”を考える第1歩に
ソニー・ミュージックエンタテインメントは11月27日、都内で「サステナビリティDay2024」を開催。アキラ100%、SAKURAI、マツモトクラブという同社グループに所属するお笑い芸人と障害当事者でもあるクリエイターがタッグを組んでネタを披露する、実証実験ライブを開催した。 【ライブ写真】「サステナビリティDay2024」で”いつも通り”の芸を披露するアキラ100% このライブは、多様性を認め合う現代においてよく耳にする「アクセシビリティー」というキーワードの意味を再定義。年齢や障害の有無など、体の状態や能力が異なる人でも同じよう「正しく伝わる」「利用しやすい」「便利である」ことを第一とするこの考え方を「笑い」にふり、“エンタメのアクセシビリティー”とは何なのかを考える第一歩として、この思いを持って活動をしているイベント・舞台の制作会社のプリコグ協力のもと、挑戦した。 トップバッターで登場したのは、“お盆芸”で一世を風靡(ふうび)した『R-1ぐらんぷり2017』王者のアキラ100%。老若男女誰もが見て楽しめる芸が魅力のアキラ100%だが、今回は視覚障害があるコミュニケーターでラジオパーソナリティーの石井健介氏とタッグ。見て楽しむ芸を、見られない人にどうアプローチするかがポイントとなるなか、アキラ100%のいつも通りのお盆芸を披露。そこに実況的な音声ガイドで“見たまますべて”を言語化し、音声とモニターでその様子を伝える独自の表現で会場を笑わせた。また後半には、観客全員にアイマスクをしてもらい、実際にアキラ100%が見えない状態でライブを展開することに。視覚を使えないなか音のみで、観客がアキラ100%のこれまでの芸からイメージさせる新たな形に。観客の“想像力”に委ねるこのネタのオチは、ブラックジョークともとれる驚きのものに。笑いとともに、驚きを残して出番を終えた。 2番手には、ギター漫談のSAKURAIが登場。代名詞となっているギターのリズムにあわせて複数の単語を伝え、オチとして面白い共通項を伝えるネタだが、今回は聴覚障害があるグラフィックデザイナーの岩田直樹氏とコラボ。通常通りのネタに合わせて、スクリーンにポップなイラストや文字を投影。SAKURAIのアクションやギターの音にあわせて、それらに動きを持たせ、音を視覚的に表現し楽しませた。 大トリで登場したのは、『R-1ぐらんぷり』で5年連続ファイナリストになるなど実力派ピン芸人のマツモトクラブ。今回は、代表ネタである「弔辞」を、聴覚障害がある手話パフォーマーで俳優の西脇将伍とともにアレンジ。“天の声”と弔辞を訪れたマツモトクラブの絶妙な掛け合いが面白いこのネタに、西脇が参加し、手話を追加。言葉×言葉×手話の“会話劇”を繰り広げながら、最後に驚きのオチを披露し会場を驚かせた。 ネタ披露後、3組はトークセッションに登壇し、それぞれのネタについて、制作の過程や“エンタメ”の「アクセシビリティー」についてのトークを展開。マツモトクラブは、「僕らからしたら耳の聞こえない方に対して、ちょっと何か気を遣ってしまうというか、どこまで踏み込んでいいのかって何か微妙なところがありました」と正直な気持ちを吐露。一方で、「でも西脇さんのお話を聞いてたら、わりとブラックな感じのユーモアとかも教えていただいて。そういうとこまでやっていったら、今日を境に、もしこの先何かやっていけるならもっといろんな皆さんに笑っていただけるんじゃないかなと。何か新たな発見と今後の挑戦もできそうだなという感触は実感しました」といい、西脇も「今回、アクセシビリティーを超えた新しい可能性、新しい形が発見できたんじゃないかなと思いました」と、可能性が広がったことを伝えた。 今回の企画を立ち上げ、トークセッションでMCも務めた同社サステナビリティグループ サステナビリティ推進部の竹村謙二郎氏は、この取り組みについて「日本のエンターテインメントにおいて、今回テーマとした『アクセシビリティー』は多くの可能性を残している。言い換えれば多くの課題を抱えていると考えていました。そこでサステナビリティ推進を担っている我々が実験的なものであってもまずは挑戦してみる必要があると考えました」とコメント。 また、イベント終了時には「今回の内容は、まだまだ健常者目線だけで考えてしまっている部分が残ってしまったと考えています。ですが共感し、参加いただいた芸人と障害当事者のクリエイターの方々が密にコミュニケーションを取り、いわばゼロから一緒にこのステージを作っていったことはとても価値のある経験になったと思います。ご覧いただいた方からも、この分野の可能性を感じることができた」という反応があったことを明かし、今後について「1回で終わらせず、今後もこのようなステージを企画し、より多くの方にエンターテインメントを楽しんでもらえるように進化させていきたい」と、意気込みを語った。