輪島塗の復興へ、若手職人の養成施設を設置…石川県に読売や北国新聞が協力
能登半島地震で大きな打撃を受けた輪島塗の復興を支援するため、石川県は担い手となる若手人材の育成プロジェクトに乗り出す。輪島市に養成施設を設置して産業の再興につなげるほか、国内外から人を呼び込み、海外にも市場を広げていく拠点とする。来年に基本構想の策定に着手し、2027年度の開設を目指す。 【写真】まさに芸術品…輪島塗の漆器
プロジェクトは、伝統工芸の振興に取り組む読売新聞社と、同県内で産学官の震災復興会議を主導する北国新聞社(金沢市)が協力し、輪島市や経済産業省、日本政策投資銀行などとワーキングチームを作って検討してきた。
輪島塗の産地である輪島市では、元日の地震で多くの工房が火災焼失や倒壊などの被害に遭った。輪島漆器商工業協同組合によると、約400の事業所のうち8割程度は輪島に戻ってきているが、高齢化が進み、将来への不安から若手の人材流出が懸念されている。
養成施設は、国内外から輪島塗を担う若い人材を集め、職人の専門技術を習得させるほか、漆芸技術の継承拠点「県立輪島漆芸技術研修所」の卒業生も受け入れる。海外市場も視野に入れた商品開発やマーケティングなどの講義も行って、輪島塗を海外に展開していく足がかりにしていく。
施設は、同研修所や輪島漆芸美術館、同組合の精漆工場など輪島塗関連施設が集まる地区に開設する。生徒の作品の展示や制作活動の見学、工芸体験ができるワークショップの開催など、観光資源としても活用。「漆芸の聖地」として国内外から人を呼び込むエリアとし、輪島復興に役立てる。生徒の活動の場を広げるため、地元のキリコ祭りや全国の祭りで使われているみこしの漆塗りの修復作業を受託することも構想している。
また、輪島で安心して技術を習得できるよう住まいも用意し、養成期間を終えた生徒の雇用を保証するため、卒業生を雇った事業者に3年間、奨励金を交付することも検討している。
県は25年度に基本構想策定委員会を設けて計画を具体化した後、養成施設や寄宿舎などの整備に着手、27年度の開設を目指す方針だ。