帰省中の貴方 出発前に是非再確認を チャイルドシート使用でも死傷する間違った使い方とは
静岡県警と下田消防署に聞いてみた
静岡県警と男児を搬送した下田消防署に、後部座席に取り付けられていたチャイルドシートの様子を聞いてみることにした。 まずは静岡県警本部広報担当者とのやりとりから。 問:1歳男児のチャイルドシートは正しく使われていたのでしょうか? 答:チャイルドシートが「車内にあった」ということだけが今はわかっています。それが適切に使われていたかどうか、前向きか後ろ向きかの方向もわかりません。使用されていたかどうかも現時点では確実なところはわかりません。 問:助手席の5歳女児はジュニアシートを使っていましたか? チャイルドシート使用義務年齢ですが… 答:そちらの件も今の段階では捜査中でもあり公表できません。 何ともツレない回答である。事故の状況、チャイルドシートの使用状況を知ることで守れる命もあると思うのだが… 一方、下田消防署にも聞いてみたが、こちらもあまり大した回答は得られなかった。 「私たち救急隊が現場に到着した時には、1歳男児は通行人によって外に出されており、心臓マッサージ(胸骨圧迫)が行われているところでした。チャイルドシートは使用されていたようですがはっきりとしたことは記録に残っていません」 ここまで読んでいただいた方には、チャイルドシートはただ使っていればいい、というものでもないことがお分かりいただけたと思う。
チャイルドシートで子どもの命を守るために大切なこと
では命を守るために、チャイルドシートをどのように使って、子どもに対してはどのように接していくのがいいのだろうか。 かつて、チャイルドシートの固定がシートベルトによるものが主流だった時代は、いかにチャイルドシートを座席にしっかり固定するか、が重要だった。 大人がチャイルドシートの上に乗り全体重をかけて座席に押し込んでシートベルトで固定するなど、大変な労力とコツが必要であった。しかし、近年はISO-FIXが主流となり、取り付けはずいぶんと楽になった。クルマに装備されるISO-FIX金具も全車標準装備(義務付け)になって10年以上が経過し、一部スポーツカーなどを除いてガチャっとはめ込むだけで確実に固定ができるようになった。 加えてISO-FIX固定のチャイルドシートも現在は2万円以下の安価なものが増えており、選択肢も多い。ひと昔前からするとISO-FIX固定の製品を購入する場合は、ぐっとハードルが低くなっている。しかしその一方で相変わらず危険な使い方をしている保護者は少なくない。 そこで、子どもを確実に100%の力でしっかり守るために注意すべき点を挙げてみた。 ・チャイルドシートはできるだけ後ろ向きで使うことが安全。安全性重視の製品の中には4~5歳まで後ろ向きで使えるタイプもある。 ・最新の安全基準ECE R129アイサイズでは生後15か月&身長76cmまでは絶対に後ろ向きで使用。極力、長期間後ろ向きが安全。 ・ハーネスは指1~2本入る程度にキツめに締める。ここがゆるいと急ブレーキ程度の衝撃でもハーネスの間から子どもが転げ落ちる危険がある。 ・車内に傘や硬い物体(ポータブルスピーカーやガラス瓶に入った芳香剤など)を置かない。事故の衝撃でこれらの物体が子どもの頭めがけて飛んで来るなど凶器になることもある。 ・子どもをチャイルドシートに乗せるときは「嫌がるんじゃないか?」/「泣き出すんじゃないか?」というネガティブな気持ちを完全に排除して笑顔で座らせる。子どもに対して「窮屈だよね。ごめんね、ごめんね」などとは絶対に言わないこと。 ・赤ちゃんがチャイルドシートを嫌がる理由の一つにリクライニングの角度がある。6か月過ぎると寝かせること自体を嫌がる子どもが増えてくる。 ・ジュニアシートはシートベルトが安全に使える身長150cmくらいまで使用する。頭部や肩回りを守る背もたれのついたフルバケットタイプがベスト。 年末から年始にかけては子どもを連れてのクルマ移動が多くなる時期である。どうか大切なわが子を、いつ起こるかわからない事故から守ってあげてほしい。
加藤久美子(執筆) AUTOCAR JAPAN(編集)