『海外挑戦のススメ』 ハリウッドで活躍するクリエイター
ハリウッドから生み出されるさまざまな映像美。新しい技術が日進月歩で生み出され、表現の幅を広げている。その一翼を担っている日本人も少なくない。アンジェリーナ・ジョリーが主演する映画『マレフィセント』では、作品の軸となる『翼』や妖精たちの表情のCGを日本人クリエイターの三橋忠央さんが担当している。日本の大学を卒業後、海外に飛び出して華やかなハリウッドで活躍している三橋さんに、『海外挑戦のススメ』を語ってもらった。
子供の頃からアメリカを意識していたという三橋さん。「僕らの子供の頃は、アメリカを神格化しているというか、憧れが常にあった」と振り返る。日本の大学在学中に、就職活動をする仲間を横目に、自分自身の身の振り方に悩んでいたという。そんな中で出会ったのが『トイ・ストーリー』(1995年公開)だった。CGの世界の魅力に取り付かれた三橋さんは、アメリカ行きを決意する。
「当時は、日本にはCGを学べる学校が1校くらいしかなかった。それに今と違い、CGを作り出すツールも熟練してなかったというか、ツール自体を自分で作る時代だった。アーティストになりたいと思うところがあって、アーティスティックな視点からアメリカに行こうと思った」と、迷いはなかったという。 「ずっと東京で生活してきて、ぬるま湯で嫌だと思っていたこともあった。アメリカで刺激のある生活は、最初はイメージ通りでしたね」と意欲的に活動を続ける。もちろん、語学堪能だったわけではないので、地道な努力も重ねた。「NHKのラジオ英会話を録音して、ずっとやっていた。聞く方はだいたいできるようになったけど、しゃべる方は苦労しましたね。でも語学力が及ばないことで、仕事で評価されないことが嫌だったので、言葉で足らない分を絵で伝えたり、メールで確認したり、やっていきました。集中的に英語ばっかり勉強したときもありました」と、決して楽な道のりではなかった。 海外生活の厳しさだけでなく、技術の進歩にも対応が迫られる。数年に一度、『ブレークスルー』と呼ばれる技術革新が訪れる世界。「中途半端なら、『何だ、これは』、と言われる業界です」と、めまぐるしく進化する技術にも対応しながら、観客を魅了する作品をてがけていく。今回の『マレフィセント』では、「映像屋として、ファンタジックなものを成功させている。その世界にどっぷり入って、彼女らのキャラクター(妖精たち)が演じているものを共感してもらえるためのビジュアルエフェクト(視覚効果)を作ることができた。鑑賞しているときは、『どの部分がCG?』とか考えないで観てほしい」と自信をみせる。