追いつめられるバスドライバー! なぜバス会社は従業員を守らず、乗客クレームに加担するのか?
乗客の非常識行動
路線バスドライバーの「2024年問題」が顕在化し、離職率や人手不足が大きな社会問題になっている。 【画像】えっ…! これがバスドライバーの「年収」です(計13枚) 筆者(西山敏樹、都市工学者)は路線バスの研究者である。当媒体の連載「ホンネだらけの公共交通論」の過去記事でも指摘したように、ドライバーにとって、事故やトラブルは日常茶飯事である。それらは必ずしもドライバーの責任ばかりではない。例えば、次のようなケースがあり、枚挙にいとまがない ・バスが完全に停止する前に乗客が席を立って降車扉に移動し、転倒した ・乗客がバスを降りて車両の前方または後方を横切り、バスまたは他の車両と衝突した ・子どもが不意に通学路から飛び出し、死傷した ドライバーが安全に対して十二分な注意を払っていても、乗客や周辺市民の非常識な行動によって責任を問われることも少なくない。ドライバーは交通事故や乗客のけがを防ぐために常に注意を払っているが、乗客のなかにはドライバーに責任を転嫁しようとする者さえいる。不当な責任転嫁は意外に多いのだ。 これはドライバーにとって大きなストレス源であり、乗客数の減少による給与カットも離職や人員不足の原因となっている。
ドライバー守らぬバス会社
バス会社がこれまで、理不尽な事故やトラブルが発生した際に、現場を支えるドライバーを守ってこなかったことは大問題だ。会社は ・沿線住民 ・バス利用者 ・地域社会 に対して“過剰”におわびする一方で、 「ドライバーへの指導・教育を再徹底する」 といった“決まり文句”で、けむに巻くことが多いのだ。 長期的かつ俯瞰(ふかん)的な視点で、路線バスの事故やトラブルの原因をデータから分析し、リスクを回避することが不可欠だ。これがバス会社に求められる姿勢だ。 近年、DX技術の発達により、車両に車載カメラを設置しデータを記録できるようになった。こうした技術は、トラブルや事故の原因分析に役立ち、その後の安全対策の策定を容易にする。 また、いざというときには 「ドライバーを守るためのデータ」 としても活用できる。バス会社は労働者であるドライバーを大切にしなければ、働き手を失い人手不足に直面することになる。そのため、 ・車載カメラ ・安全な床材 ・車内に段差のない車両 など、新しい技術でバス事業とドライバーを守る取り組みを始めているところもある。