なぜ今ベーシックインカムなのか 第4回:「家」に縛られる女性たち 同志社大学・山森亮教授
■苦しむ女性たちに経済的な力
前述の大会には、生活保護的な仕組みではなくベーシックインカムが必要だと考える女性達が多く参加していた。筆者がそうした主張をしていた女性達についての報告をしたこともあり、大会中、多くの女性活動家たちの声を聞く機会があった。 イギリス・ロンドンから来ていたバーブ・ジェイコブソンさんは、ロンドンで生活保護的な仕組みの申請をサポートする仕事に携わっている。その仕事のなかで、ベーシックインカムが必要だと確信するに至ったと語る。
カナダ・バンクーバーの女性シェルターで働くケイティ・ストライベルさんは、「経済的な理由で暴力的な家庭から逃れられなくなっている女性は沢山いる。逃れる決断をし、私たちのシェルターにたどり着いた女性達にとっても経済的な困難は大きな問題だ」と語る。そして「ベーシックインカムはドメスティック・ヴァイオレンスに苦しむ女性達だけではなく、全ての人に経済的な力を与える。みなが、ケア労働をどれだけ担うのか、なにか創造的なことに時間を使うのか、なにかを習いにいくのか、などを自分たちで決められるようになる」と、その意義を語ってくれた。 いずれにしても、ベーシックインカムのある社会では、「誰のおかげで食べていけるんだ!」という発言は意味をなさなくなる。この発言が意味を持つのは、性別役割分業のもとで、女性が家事労働やケア労働をにない、男性が生計を維持するための労働をになう、という状況のもとで、かつ家庭内での家事やケア活動が労働だと見なされていない場合である。 先述のジェイコブソンさんは、かつて『家事労働に賃金を』要求するキャンペーンに参加していた。彼女達がめざしていたのは、まず家事労働やケア労働を労働として社会に認知させることだった。 ※5回連載。原則、毎週金曜日に掲載予定。