“モンスター”井上は辰吉を超えるのか?
“モンスター”井上尚弥(大橋)の日本タイトル挑戦が決まった。 井上が、王者の田口良一(ワタナベ)に挑戦する日本ライトフライ級タイトル戦が8月25日、スカイアリーナ座間で開催されることが25日、発表された。スカイアリーナ座間は、井上の自宅から車で6、7分の距離にある庭のような場所。通常、日本タイトルの指名試合は、王者側の主催で興行を打つが、今回は挑戦者である井上側が興行権を買い取る形で“ホーム”で戦うという異例の体制。しかも井上の放映権を持つフジテレビが中継する。 26歳の田口は初防衛戦で、20歳の井上はプロ転向4戦目。王座を奪えば、あの辰吉丈一郎の日本タイトル最短奪取記録に並ぶ。 「最短記録は、たまたまの流れで狙っていたわけではありませんが、辰吉さんの記録に並ぶのには気合が入ります」 この日、後楽園飯店で行われた記者会見は、写真撮影が終わると、囲み取材となったが、王者の元にインタビューしようと向かったのは2人体制で取材に来ていたスポーツ紙の一社だけ。対して挑戦者、井上の周りは黒だかりの取材陣となった。 「相手に何もさせないで勝つのが僕のボクシングのテーマ。打ち合いでも、距離を取ってでも、ハッキリと勝敗を付けます。KOを狙います」 スーツで決めた井上は、どや顔をするわけでもなくキリっとした顔で言った。「不安はありません。不安があるということは練習不足ということ」 メディアの関心も、早くも、この試合の次に向かう。日本タイトルは、世界挑戦するためのパスポートに過ぎない。 大橋秀行会長も「年内。5、6戦目には世界を」と断言した。テレビ局との関連で、大晦日での世界初挑戦が有力だが、そうなると、WBA世界ライトフライ級王者、井岡一翔の持つ7戦目での世界奪取の日本最短記録を更新することになる。 井上は「個人的にはC(WBC)のベルトがカッコイイ」と言うが、大橋会長は「尚弥には4つのベルトを全部、取らせたい」と大胆な野望を語る。今春からJBCが認定したIBF、WBOを含む4団体の統一王者というとんでもない計画を目論んでいる。では、このタイトル戦、本当に井上に死角はないのだろうか。 田口は、現在、WBAのライトフライ級で世界3位にランキングされている。 右構えのオーソドックススタイルで全日本新人王を獲得した後、日本タイトル挑戦者決定トーナメントである最強後楽園で優勝して後に世界挑戦した日本ライトフライ級王者、黒田雅之とドロー。20戦18勝(8KO)1敗1分けの戦績。リーチを生かし伸びてくるパンチが特徴でボディ攻撃も得意としている。確かにまとまっているが、飛び抜けたスピードやパンチ力という怖さがない。 両者の力量を比較すると、スピードとパンチ力、攻守のテクニックも含めて井上が上。よほどのアクシデントがない限り井上が敗れるパターンは予想しにくい。序盤から、スピードで上回る左で突破口を開き、そこから、右ストレートかフックのコンビネーション、もしくは、返しの左フックでフィニッシュに持っていくだろう。