三笘薫「先発完投型」スタイルで復活 今季開幕弾、相手の一発レッド誘発プレーも
一方、その10分後に、この日2番目と言いたくなる痛快なプレーを見せたのは三笘だった。ルイス・ダンク(元イングランド代表)のロングフィードを、対峙するエバートン右SBヤングがカットとしたシーンだ。三笘はそのトラップの瞬間に狙いをつけて急接近すると、ボールをかっさらいドリブルで前進。するとヤングはたまらず三笘の腕を引っ張り、主審から一発レッドの判定を受けたのだった。三笘は試合を決定づける大きなプレーに能動的に関与した。 試合結果は0-3。三笘の動きは尻上がりによくなっていった。プレー機会は前半よりも格段に増え、まさに代えにくい選手となっていた。昨季と同様である。前任のデ・ゼルビ監督は、そのまま最後まで三笘を出場させることが多かった。使い詰めではないかと日本人をやきもきさせるほどだったが、新任のハーツラー監督はさすがに代えた。ただし、ベンチに下げた時間は後半44分だった。 前半は飛ばさずに抑えながら走り、後半勝負に懸けるマラソンランナーのようである。前半のプレー機会の少なさについて先述したが、それは三笘の気質と深い関係があると見る。 アタッカーのプレータイムがいまや1試合平均約70分の時代を迎えているなかで、三笘は優に80分を超え、90分に限りなく近い時間までプレーする、まさに「先発完投型」だ。息切れ覚悟で飛ばすことは絶対にしない。終盤にいくほど活躍が期待できる、現代サッカーにおいては珍しい選手だ。 ただ、強力なライバルが現れたときどうするか。最初から飛ばさざるを得ない環境下に置かれた時はどんなプレーを見せるか。もうワンランク上のチームでプレーする姿を見たいと考えるのは、筆者だけではないはずだ。
杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki