「天井からゴキブリが雨のように降ってきた!」ごみ屋敷清掃芸人・柴田賢佑が語る、ごみ屋敷のとんでもない世界
――ごみ屋敷って、どれぐらいの期間をかけて完成するんですか? 柴田 早い人は1年もかからずに膝上ぐらいまでごみが積もっちゃいますね。逆に僕が見た中でいちばん古かったのは、約60年かけて作られたごみ屋敷です。いちばん下に埋もれている雑誌や新聞を見るとわかるんですけど、昭和30年代のものは見たことがあります。でも明治とか大正時代からのごみ屋敷はないんですよ。 ――それはなぜなんですか? 柴田 いろいろ自分で調べたんですけど、高度経済成長と関係あるのかなって。人口が増えて大量消費の時代になって、コンビニもできて、ごみがどんどん増えていくんですよ。そしてサラリーマンも残業が増えて家に帰れず、どんどんごみが積み重なっていくのかなと。 ――確かに物がない時代では、ごみ屋敷になりようがないですよね。 柴田 昔の人でも、小説家で本や原稿用紙が部屋中に散乱してる、みたいな話は聞くんですけどね。昔になればなるほどコンビニ弁当とかペットボトルはないので。 ――陶器のお皿やコップだったら何度も使うから、ごみにならないですもんね。 柴田 あと、昔はごみを適当に捨てられたじゃないですか、ルールが緩かったというか。でも今は、ごみ出しの曜日が決まっているし分別もちゃんとしないといけないので、ごみを捨てられない人が出てきたのかなって考えもあります。 ――ごみ屋敷には一人暮らしが多いイメージがありますが。 柴田 確かに僕が行ったことがあるのはほぼひとり暮らしの家ですけど、先輩から「ごみの上を子供が走り回っていたところがあった」って聞いたことあります。 ――最近では、生前整理が大変だと聞いたことがあります。 柴田 何度か経験がありますが、子どもと親がいっしょに生前整理に関わると、整理がつくまでにすごく時間がかかります。親が「これはあなたが赤ちゃんのときに使ってたの」とか思い入れがあるので、処分が全然進まないんですよ。亡くなったお父さんが使っていたスナックのライターが大量に出てきて、どうする?って話になっちゃったり。 そういうときは「故人を思い出してあげただけで、十分ではないでしょうか?」って話して、処分してもらったり。捨てるのは嫌でも売れそうなものは「誰かが大切に使ってくれますよ」ってお話すると、引き取らせてもらえることが多いですね。 ――カウンセラーに近い作業ですね。いろいろ大変かと思いますが、今のお仕事を続けている理由って何でしょうか? 柴田 この仕事はすごくやりがいがあると思っています。給料も悪くないし、色んな人の生活を垣間見られるので楽しいというか。時にはとんでもない現場もあって刺激にもなりますし。マンネリ化して刺激のない生活に飽きている人には特におすすめです。確かにきつい現場もありますけど、やってよかったなって思います。この仕事を勧めてくれた嫁には感謝ですね。 柴田賢佑(しばた・けんすけ)1985年12月17日生まれ、北海道出身お笑いコンビ『六六三六』として活動するかたわら、ごみ屋敷清掃の仕事をこなす。先日、『ぐりんぴーす』落合隆治とともにお笑い芸人による、ごみ屋敷片づけ団体「お片付けブラザーズ」を設立公式X【@ATAMADAINAMIC】 取材・文・撮影/関根弘康