掛布2軍監督、異例尽くしのファーム開幕戦も勝利で飾れず
何もかもが異例だった。開始1時間前に入場が規制され立ち見客が出た。ファームの公式戦の開幕試合。決して交通の便がよくない鳴尾浜球場で、しかも、平日のゲームである。ファンの目当ては、28年ぶりに背番号「31」をつけて帰ってきた掛布雅之2軍監督(60)だった。メディアも注目、スカパーが2軍戦を生中継し、地上波でも翌日の深夜に録画中継されることになった。しかも試合後には、掛布2軍監督へのテレビ、ラジオの独占インタビューの申し入れが3件あった。若手育成の大きな役割を課せられ現場復帰した“ミスタータイガース”への期待度を物語るような現象である。 掛布2軍監督は、「先取点でゲームを動かしたい。大切なのは序盤のボールの見極め」と語っていたが、中日の先発、伊藤準規(25)を攻め2回に待望の先取点を奪う。一死からペレスがライト前ヒットで出塁。続く柴田講平(29)がライト線を破り、フルカウントでスタートを切っていたペレスが一気にホームに生還した。 しかし、「怪我でキャンプでは序盤で2軍に落ちてきたが、ボールの質はピカいち。先発でも中継ぎでも、1軍で戦力になってもらわないと困る選手。5イニング予定だが、上にアピールするような躍動感を見せてほしい」と掛布2軍監督が開幕投手に指名した先発6番手候補の一人でもある左腕、島本浩也(23)が、そのリードを守ることができない。 3回に一死から堂上直倫(27)、松井佑介(28)に連打を浴び、4番に入っているナニータ(34)のインサイドを狙ったストレートが真ん中に入り、センター越えの逆転3ラン。さらに続く福田永将(27)に初球の甘い変化球をとらえられレフト超えに連続アーチを浴びてしまう。4回にも、自らのバント処理ミスなどからピンチを広げ、松井佑に2点タイムリーを許し、1-6とリードを広げられてしまった。 6回にも、3番手の伊藤和雄(26)が崩れて3失点。 一方、阪神打線は毎回走者を出しながらも、中日の武藤祐太(26)、小川龍也(24)、育成の岸本淳希(20)、育成の三ツ間卓也(23)のリレーの前に8回まで無得点。最終回に金子丈(23)から4番に抜擢されていた陽川尚将(24)がソロアーチを放って一矢を報いたが、2-9で試合終了。中日の小笠原道大監督(42)との2軍での新監督対決は、小笠原中日2軍の勝利となった。 試合前、ファン550人に一枚、一枚、自筆サインを書き入れた掛布2軍監督の野球カードが配られた。 「多くのファンに見られてこそ、プロは成長する」。感謝の気持ちをこめてのファンサービスだった。開幕戦は白星で飾れなかったが、掛布2軍監督の注目度の高さで、集まる多くのファンが、若手に緊張感というこれまでの阪神2軍にはなかった舞台を与えてくれることは間違いない。 試合後、掛布2軍監督は、「結果は残念だが、島本には緊張もあったのかな。この開幕戦の負けを選手一人ひとりが責任を持ってどう受け止めるか。8点差があっても江越が、全力疾走でショートゴロをひとつのジャックルでセーフにしたし、陽川も最終回に自分の形でスイングをしてホームランを打った。そういう姿勢を評価してやりたいし、明日、選手がどう答えてくれるか、楽しみでもある」と語った。 明日、16日も、同一カードが鳴尾浜で行われる。