特別警報をなぜ待ってはいけないのか――気象庁・連日の緊急会見
日本付近に停滞する梅雨前線の影響で大雨のおそれがあるとして、気象庁は3日午前、2日午後に続いて緊急の記者会見を開いた。 同庁の黒良龍太・主任予報官は「非常に激しい雨が同じような地域で数時間続くような場合には、大雨特別警報を発表する可能性がある」と話す一方で、「大雨特別警報が発表される段階では、何らかの被害が発生している可能性が高く、避難開始するには遅い。自分の命、大切な人の命を守るために、特別警報の発表を待つことなく、早め早めの避難を」と呼びかけた。
なぜ大雨特別警報を待ってはいけないのか
黒良主任予報官は会見中、何度も「特別警報の発表を待つことなく避難を」と繰り返した。それはなぜか。 大雨特別警報は、自治体が発令する避難勧告や避難指示(緊急)に相当する気象状況をはるかに超えるような現象をターゲットに発表する。よって、特別警報が発表される段階では、既に何らかの災害が発生している可能性が極めて高い。 しかし、浸水想定区域や土砂災害警戒区域など、本来は避難行動をしておかなければ身の安全を守れないところにいるのに、残念ながら、何らかの理由でまだ避難できていない人がいることも考えられる。 そうした人々に向けて、「最後通告」のような形で出されるものといえるだろう。 このため、この段階で外に出て避難行動を取ることには危険を伴う可能性がある。災害の危険がある場所なのに、避難できていない人にとって行動の選択肢は限られているし、場合によっては、どの選択肢をとっても命が危険にさらされる可能性もある。 だからこそ、特別警報の発表を待ってはいけない。
なぜ特別警報の可能性に言及するのか?
それでは、なぜ特別警報発表の可能性に言及するのか。 特別警報が発表されるような「異常な事態」が迫っている可能性があるということを伝えることで、気象庁が持っている危機感を共有してもらおうという狙いがある。 昨年の西日本豪雨の時も、気象庁は特別警報が発表された日の午前、特別警報発表の可能性について言及した。結果的には、平成最悪の犠牲者を出す豪雨災害となってしまったが、事前に危機感を伝えたことで、数字には表れてこないが、救われた命もあった可能性は否定できないだろう。 特別警報について「発表された時には既に手遅れの可能性がある」と正しく認識したうえで、それより前に身の安全を確保することを心がけよう。