神木隆之介に結婚を申し込む謎の老婆の正体は“79歳名女優”。90年代の名作から変わらない存在感
毎週日曜日よる9時から放送されている神木隆之介主演のドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS)第1話は、一本の優れた映画作品と向き合った気分にさせてくれる。 【画像】現在79歳の宮本信子 でもそれは、野木亜紀子による脚本の世界観によるものでも、塚原あゆ子監督の演出手腕が映画的だからでもない。神木隆之介の相手役を演じる宮本信子の恐るべき存在感によるものである。 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、相手役の老優はいったい、誰なんだと最初思ってしまった本作の宮本信子について、その特徴的な語気に注目して解説する。
神木隆之介のふり幅ある名演に惚れ惚れ
野木亜紀子が脚本、塚原あゆ子監督と新井順子プロデュースによる映画『ラストマイル』(2024年)をそれなりに楽しみながらも、脚本に書かれたことを再現することに注力した画面に対しては、懐疑的な眼差しを向けてしまった。 同作が2024年を代表する大ヒット作になったのは、『MIU404』(TBS、2020年)などの製作チームが集結して、テレビ画面上の人気キャラクターたちが映画館のスクリーン上でも躍動するからなのか。 いずれにしろ、そのチームが再度タッグを組む作品として、神木隆之介主演のドラマ『海に眠るダイヤモンド』が注目されている。「日曜劇場」特有の大げさな演出がある程度抑制された作風にはかなり好感がもてる。 2018年の東京と1955年の長崎県・端島で、時代設定と舞台が平行して描きわけられ、どちらも神木隆之介が一人二役で演じる。売上が好調とはいえないホスト・玲央と大学をでて故郷の炭鉱のために働く鉄平とで、剛柔のふり幅をうまくリンクさせる神木の名演に惚れ惚れする。
相手役の老優は誰なんだ
本作には強力な存在がいる。第1話、早朝の歓楽街で玲央が、所属するホストクラブの広告看板めがけて飲みかけのドリンクを投げつける。一部始終を袖で見ていた謎の老人・いづみ(宮本信子)がドリンクを拾い、自転車で走りだそうとする玲央にわたす。 初対面の玲央に対して「私と、結婚しない?」と冗談半分半ば本気でプロポーズするこの老人は何者なのか。そして神木隆之介の相手役の老優はいったい、誰なんだと最初思ってしまった。一見して気づかなかったことを筆者は大いに恥じた。 宮本信子である。夫である伊丹十三監督作の主演俳優として、『ミンボーの女』(1992年)や『スーパーの女』(1996年)などで、「うぎゃあぁぁぁ」とか「ぶあぁぁぁ」とかいった音に近い叫び声をあげてばかりいる主人公を演じてきた、怪獣みたいな存在感の名優。『海に眠るダイヤモンド』では老人役の謎めいた魅力と老優の存在感が見事に重なっている。