牧野知弘 デベロッパーが外国資本による<高額マンションの買い占め>を歓迎している理由とは…「晴海フラッグ」が売れているウラ事情
「かつて超高額マンションと言えば1億円、いわゆる『億ション』でした。ところが今や、3億円を超える住戸は珍しくありません」と語るのは、オラガ総研代表取締役の牧野知弘さん。今回は、マンション価格高騰の背景を牧野さんに解説していただきました。牧野さんいわく、「不動産価格が一方的に上昇する時には、その波に乗ろうと、多くの業者や投資家が群がる」そうで――。 【書影】驚愕の価格の背景には何があるのか?牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』 * * * * * * * ◆横行する業者買い 先日、メディアの取材で、湾岸部の新築タワーマンションの登記簿を閲覧したのですが、驚愕(きょうがく)しました。高層部東南部分の角部屋(かどべや)がほとんど1列、同じ不動産業者に登記されていたからです。 人気物件だったので、価格が上昇しそうな角部屋1列を一括で買い入れたのでしょう。 購入業者は、名も知れない日本の不動産業者です。 登記簿の乙区事項欄(おつくじこうらん)を見ると、この業者に融資しているのは、香港の投資会社でした。 つまり、外国資本が日本で設立したペーパーカンパニーを通じて日本の高額マンション、しかも値上がりしそうな部分を買い占めたわけです。 このようなことは、デベロッパーにすれば「歓迎」です。 なぜなら、タワマンは数百戸から1000戸を超える住戸を効率よく捌(さば)く必要があり、1社でまとめて買ってもらえれば手間がかからないからです。それによって、「第1期即日完売!」などと銘打ち、販売促進につなげることもできます。
◆晴海フラッグ 別な事例も見てみましょう。東京五輪の選手村の跡地で分譲されている大規模マンション「晴海(はるみ)フラッグ」が、よく売れています。 好調の要因は、賃貸を含めて4000戸以上になる一大タウンで都心に近く、オリンピックレガシーがあるから、などと言われていますが、最大の理由は、分譲価格が周辺相場に比べて2~3割ほど安いことです。 競争率は一部住戸で200倍になったなどと喧伝されましたが、これには裏があります。 2023年6月に行なわれた高層棟の分譲から、申し込み名義1者あたりの申込可能な住戸を、2戸までに制限をかけました。 実は、それまでの分譲では不動産業者が5戸、10戸などとまとめて申し込む事例が後(あと)を絶(た)ちませんでした。 周辺相場に比べて大幅に安い住戸をまとめて仕入れて転売することを目的にした業者買いです。 これが目に余るようになったため、制限をかけたのです。
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