「迷わず逃げてください!」 もしも「上司が“齋藤知事タイプ”だったら」に即答した人事コンサルの真意
日本人会社員との相性が最悪なタイプ
典型的な日本型の会社員と、サイコパスタイプの上司とは「非常に危険な組み合わせ」と新井氏は補足する。 「日本の労働者は”世界一不安で不満で不幸”と国際的な労働機関からお墨をもらっているくらい、つらそうに仕事をしている人種なんです。自己重要感が低く、自己有用感(人の役に立ちたい)が高い。そして日本人の自己重要感は他の国民とは異なり自己有用感と有意な相関性があります。逆にいえばそれだけ真面目でもあるんです。どんなことに対しても一生懸命取り組みますから。 ただ、これがサイコパスタイプの上司にあたると悲惨です。頑張っても褒められない、手柄は上司のもの。部下は上司から『お前は無能だ』と言われ続けると、次第に自分が存在している価値さえ見失ったとしても不思議はありません。サイコパスタイプの上司は、そんな風に部下の心を意のままにコントロールしようとするのです」
多くの独裁上司がたどる末路
齋藤知事の実体が明らかになるにつれ、兵庫県民はおろか、日本全体で “ドン引き”ムードが充満している。そこに共通するのは「なぜやったことを素直に認めず、道義的責任も取らず、居座り続けるのか」という呆れと憤りだろう。 騒動が長引くほどに、「こんな上司がいたら絶対嫌だ」と、自分事のように捉え、渋い顔で報道を目にしている会社員もいるかもしれない。そう身構えてもいいくらい、割合的にはサイコパス的人物が意外なほど多いのは確かだ。 「でも救いはあります」と新井氏が続ける。 「経験則ではサイコパスタイプでのし上がった人は、落ちるのもあっという間です。仕事はできても人望がありませんから、権力を失えば総スカンです。私の知る人でもサイコパスタイプはその後、哀れなほど落ちぶれて社会をさまよっています。結局、仕事って、一人では何もできませんからね」 最後に新井氏は、斎藤知事の行く末をこう見通した。 「どう転んでもやめざるを得ないでしょう。ここまでくると県政が回らなくなってしまいますから。企業のような論理は働きづらいかもしれませんが、人間の本能に根差した全方位からの有言無言の反発が大きな圧となって、動かない岩を動かすんじゃないですかね。そういう圧さえ感じないのがサイコパスタイプではありますが…」 新井健一(あらい・けんいち) 経営コンサルタント、アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役 1972年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大手重機械メーカー人事部、アーサーアンダーセン(現KPMG)、ビジネススクールの責任者・専任講師を経て独立。人事分野において、経営戦略から経営管理、人事制度から社員の能力開発/行動変容に至るまでを一貫してデザインすることのできる専門家。著書に『働かない技術』『いらない課長、すごい課長』(日経BP 日本経済新聞出版)『事業部長になるための「経営の基礎」』(生産性出版)など。
弁護士JP編集部