山本由伸、メジャー1勝 初回無死満塁3連続K ソウル悪夢払拭「押し出しは一番嫌。ゾーンにいいボールを」
◆米大リーグ カブス1―4ドジャース(6日・米イリノイ州シカゴ=リグレーフィールド) ドジャース・山本由伸投手(25)が6日(日本時間7日)、敵地・カブス戦で3登板目にしてメジャー初勝利をつかんだ。初回にいきなり無死満塁のピンチを迎えたが、3者連続三振と圧巻の投球でリズムに乗り、5回80球で3安打無失点。鈴木誠也外野手(29)から三振を奪うなど、毎回の8奪三振だった。大谷翔平投手(29)は、先制点につながる安打を放つなど4打数2安打で弟分の白星をアシストした。 メジャーの洗礼は終わっていなかった。試合後、山本は取材のためベンチ裏に立っていたが「ムーキー(ベッツ)が呼んでいる」と、広報に促されクラブハウスに戻ると、衣類を運ぶカートに乗せられた。シャワールームに連行され、祝福のビールを四方八方からかけられた。 「何が起こっているか分からなくて、『目を閉じろ!』と言われ、あっという間に。まだ喉に何かがあります。何の味か分からないですけど、ビールだけではなかったですね」と、うれしそうに振り返った。 初回、鈴木への四球と2安打でいきなり無死満塁。初登板だった3月21日の韓国・ソウルでのパドレス戦の1回5失点が脳裏によみがえってくるようなピンチだったが「押し出しは一番嫌だなと思っていた。ストライクゾーンにいいボールを投げようと思った」。ギアを上げ120キロ台のカーブを有効に使い4番から3者連続三振で切り抜けた。 2回も2死満塁で、19年MVPのベリンジャーを見逃し三振。3回からの3イニングは一人の走者も許さなかった。5回1死では鈴木から空振り三振を奪い「狙ったところではなかったけど、たまたまストレートがいい高さに抜けたので、運がよかった」と苦笑い。毎回8K、5回無失点での初白星に「いい投球ができて、無事初勝利することができたので、すごくうれしく思う」と胸をなで下ろした。 自分を信じ続けた。オリックスで3年連続MVP&沢村賞という圧倒的な結果を残して、12年総額3億2500万ドル(約461億円=契約発表時のレート)でドジャース入り。環境は変わったが、信念を曲げなかった。日本からはシェフやトレーナーら「チーム由伸」がキャンプから同行。日本時代とは変わらぬ食事を口にした。やり投げトレを行うなど、ルーチンをなるべく変えないように努めた。ストレスない毎日に「なるべく日本と同じようにしていただいたので、苦労したところは全くない」と感謝した。 デビュー戦の初回KOで懐疑的な見方もされた。それでも「シーズンは長い。一試合一試合に集中して過ごすことだけを考えた。いつも通りです」。2戦目からセットポジションでのグラブの位置をオリックス時代と同じ胸の位置に戻すなど己を信じた。2戦目からは10イニング連続無失点と実力を見せている。 エース格の働きを期待される重圧と闘いながらの1勝。だが、25歳右腕の新天地での歩みは始まったばかり。「一試合一試合に集中して貢献していけるように」。ホッとしたように、左手に握ったウィニングボールを見つめた。(安藤 宏太)
報知新聞社