初エッセー本を出版したハナコ秋山「コントがもっと見たいって方がいたら、『大丈夫です、僕が動くんで』と思ってます」
『新しいカギ』ではスタジオコントもロケ企画もやらせていただいて。僕はどっちもすごい好きなんだけど、お金がかかるからコントが徐々に減ったと思うんです。 レギュラーの初回でやった「屋台崩し」(コント「岡部のプロポーズ」の最後で建物が倒れる大仕掛け)にしても、柱の一本一本がとんでもなく高い。しかも、数百万円かけて1本のコントを作っても、4~5分流したら終わり。 一方で、「学校かくれんぼ」(『新しいカギ』のメンバーらが学校に隠れて生徒たちが探し出す人気企画)なら、丸々1時間いけたりする。コスパ的にも企画モノは強いんだなって改めて気づきました。 ただ、放送作家の内村宏幸先生の『ひねり出す力"たぶん"役立つサラリーマンLIFE!術』(集英社クリエイティブ)を読んだら、僕が大好きだった『笑う犬』シリーズ(フジテレビ)の頃から「お金がないので、用意できるのは電柱と自販機だけです」とかって言われてたらしくて。 それで生まれたのがネプチューンの堀内健さんと遠山景織子さんのギャル男とギャルのコント「トシとサチ」。今思うと、あれって自販機の前に座ってなんでもない話をするだけなのにめっちゃ面白いじゃないですか。夜の設定で、たまに車のライトが通り過ぎるだけだからコスパもいい。 ほかにもお金をかけない工夫があるのを知って「なら今もできるじゃん!」と思って。だから、「もう少しコントを見たいな」って思ってる方がいたら「大丈夫です、僕が動くんで」みたいな気持ちもあります。 演出の方も「『学校かくれんぼ』という強いコンテンツが1本できたからこそ、コントを差し込んでいきましょう」って言ってくれてるので。 ――『なりゆき街道旅』(フジテレビ系)などの進行役はご自身に合っていると思いますか? 秋山 よく初めてお仕事するスタッフさんが「秋山さんツッコミですよね」と進行役を振ってくださるんですよ。ただ、僕ってコントでもズバズバさばくタイプじゃなくて。 それで悩んだ時期もあったんですけど、アメリカに目を向け始めた元ゾフィーの上田さんから「欧米ではMr.ビーンみたいなコミカルなキャラクターをファニー(ボケ)、隣にいる一般人をストレート(普通の人)っていうらしい」って話を聞いたときに「僕はストレートをやってたんだ!」ってすごい腑に落ちたんです。ツッコミじゃないポジションがあることに安心したんですよね。 今回の本は、そんな自信のない不器用な僕の性格をあらわにしています。「芸能界って華やかで、自分とは生きてる世界が違うよな」って斜めからタレントを見ている方とかに、「おまえ、こっち側の人間じゃん! そういうやつもいるのか!」って思ってもらえたらうれしいです! ■秋山寛貴(あきやま・ひろき) 1991年生まれ、岡山県出身。菊田竜大、岡部大とお笑いトリオ「ハナコ」を結成。トリオの中ではネタ作成を担当。ハナコとして、「AbemaTV presents ワタナベお笑いNo.1決定戦2018」優勝。『キングオブコント2018』優勝。趣味はアートで、自らイラストを描いて個展も開催している。文化放送『ハナコ秋山寛貴のレコメン!』でパーソナリティを務める。『新しいカギ』(フジテレビ系)メンバーとして、『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』で総合司会を務めた ■『人前に立つのは苦手だけど』 KADOKAWA 1595円(税込) お笑いトリオ「ハナコ」のネタ作りを担当する秋山寛貴氏による初のエッセー集。文芸小説誌『小説 野性時代』(KADOKAWA)で2022年11月から連載していたエッセーをまとめた一冊で、お土産屋を営む父との話、高校時代の美術部の話、初めてのひとり暮らしの思い出といった話から、『キングオブコント2018』優勝時の秘話まで、自ら描くオリジナルイラストとともにバラエティに富んだエピソードが綴られている 取材・文/鈴木 旭 撮影/鈴木大喜