急拡大中のスキマバイト、職場では「スキマさん」 条件や環境の悪さに上がる悲鳴「インフルでも出ろって、やばい」「闇バイトよりはマシ」
1973年生まれの派遣社員のヒロインが、見下す男性正社員をしのぐ活躍をする姿が人気を集めた2007年放送のドラマ『ハケンの品格』。17年前放送の同ドラマでは序盤こそ尊大な社員がヒロインを「ハケン」呼びするが、基本的には名前で呼ばれていた。職場で役職でなく名前呼び、は今や常識だろう。ところが、スキマバイトの世界では時代が戻っているらしい。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、「スキマさん」たちの本音を聞いた。 【写真】2008年暮れ、仕事と住まいを奪われた派遣労働者を救済するため日比谷公園にできた「年越し派遣村」
* * * 「これまでも仕事で本名とかニックネームとかいろいろ呼ばれましたけど『スキマさん』は初めてでした」 会社の許可を得ていわゆる、スキマバイトをしている筆者旧知の都内会社員(40代)の話。それにしても「スキマさん」ではみんなスキマバイトで来た人「スキマさん」になってしまうのでは? 「はい。みんなスキマさんで『そっちのスキマさん』『スキマさん呼んで来て』とまあ、話しかけられたとかニュアンスとかで『私のことだな』とか『彼のことか』と認識する感じです。なんか悪気はないみたいです」 以前から『ハケンさん』とか『バイトさん』という呼び名はあったが『スキマさん』とは。 「確かにその日1日しか入らないこともありますし、ずっといっしょにいる間柄でもありませんから名前を憶えるのも、って感じでしょうけど、なんか『モヤり』ますよね。(スキマバイト大手)アプリの名前で呼ばれることもありますけど、誰もが知る大手じゃない場合はひっくるめて『スキマさん』ですね。その店だけの話かもしれませんが」 この「モヤる」はかつて『三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2018」』の2位に入った。「もやもやする」という心情の短縮形で大賞となった「ばえる」、3位の「わかりみ」と共にネットコミュニティを含めて広がり、定着した。そうか「スキマさん」はやはり「モヤる」か。 「モヤりますね。大学卒業したあとしばらく倉庫とかハケンやってたときの『そっちの人』とか『あんた』よりはマシですがね。だから名前で呼んでくれるところは嬉しいですよ、あたりまえなのにね」