「実は、物怖じするタイプでした」…平石直之が、”アベプラの猛獣使い”と呼ばれるようになるまで
「会議がうまくまとまらなくて困っている」、「チームのメンバーの結束をもっと固めたい」など、さまざまなグループ活動の話し合いの場面で必要とされるのが、これまで主にビジネスの世界で注目されてきた“ファシリテーション”といわれるスキル。すなわち「会議やミーティングなど“人が集まる場”のコミュニケーションを円滑にして、成果を最大化する技術」のことであり、その役割を担う人を“ファシリテーター”と呼ぶ。 【画像】転職は厳しい、出世もムリそう…管理職になれなかった「おじさん社員」の末路 報道番組「ABEMA Prime」の司会進行役として、ひろゆきさんやEXITなど、個性豊かな出演者たちをまとめている「アベプラの猛獣使い」こと、テレビ朝日のアナウンサー・平石直之さん。9月26日に発売した新たな著書『マンガでカンタン! ファシリテーションは7日間でわかります。』(Gakken)が話題を呼んでいる。そして、10月からは新たにスタートした日曜日の「グッド!モーニング」のMCも担当。しかし、そんな平石さんも、もともとは「人前で物怖じするタイプ」だったという。「猛獣使い」とまで呼ばれるようになった経緯や、本書への思いについて話を聞いた。
私もファシリテーターの役割を“演じて”いる
報道・情報番組のキャスターとして活躍し、25年以上のキャリアを持つ平石さん。“ファシリテーター”という役割自体を最初に意識したのは、「ABEMA Primeの番組を担当するようになってから」だという。 「ある日、インタビューを受けた際に『あなたがやっていることは、ファシリテーションですよ』と言われ、初めてその言葉を知りました。もちろん、話し合いの技術のようなものは、以前から漠然と頭のなかにはあったのですが、はっきりとは意識していなかった。そんなときに『本にしませんか?』と声をかけていただいたことで、1つ1つ言語化していったんです。どういう思いで、何をしているのかを、一つずつ言葉に落としこんでいきました。その過程で、勘でやっているようでいて、実はスキルだったことを再認識しました」 大学でもファシリテーションの講義が一般化してきていて、若い世代の間にも“ファシリテーション”という言葉が浸透しつつある現代。実は、平石さん自身は、特にどこかでファシリテーションを学んだ経験はない。本書に書かれていることは、いずれも平石さんがこれまでのキャリア、経験の中で、試行錯誤しながら培ってきた結晶ともいえる。 「実際にファシリテーションで日々苦労をしている立場だからこそ、書けることがあるのではないかと思いました。本に書いたことは、私がまさに番組の中で実践していることばかりなので、その様子を放送で“見る”こともできる。ある種、私にとってもアベプラのバイブル的な位置づけです。私自身もうまくいかないことも多いので、基本に立ち返るという意味でも、本にしてよかったなと思います。『平石、できてないじゃないか、暴走してるぞ』みたいなことも含めて(笑)」 「アベプラの猛獣使い」と評され、多様な出演者をまとめる平石さんの姿からは想像できないが、自身は「もともと多くの人がいるところや、人付き合いが得意なほうではなく、むしろ人前では物怖じするタイプだった」と話す。 「天性のムードメーカーといえるような、もともと場をまわすのが上手な人もいますよね。でも、私にはそのような才能があるわけではなく、あくまで身に着けた技術で成り立っていると思っています。いわば、ファシリテーターの役割を“演じて”いるんです。そうした意味で、私のファシリテーションは、誰でも再現可能です。 私自身も、ファシリテーションをスキル化していったことで、人の中にポンと置かれても、あまり動じなくなりました。周りの人を観察しながら、いざとなればスキルを発動するし、必要なければしなくてもいい。私たちの悩みは人間関係に起因することも多く、ファシリテーションの概念やスキルを知っているかどうかの違いは大きいと感じます」