「実にクルマ屋らしい良識のある仕事ぶり」by 渡辺敏史 BMWのクーペSUV、X2とiX2にポルトガルで試乗!
内燃エンジンのM35iの乗り心地も気になる!
よりクーペライクなスタイルへと進化した2代目X2とBEV版のiX2に、モータージャーナリストの渡辺敏史がポルトガルで試乗した。 【写真42枚】モータージャーナリストの渡辺敏史がポルトガルで試乗したBMWのかっこいいクーペSUV、X2とiX2の詳細画像はこちら ◆車格感は完全にひと回りは大きい 奇数はユーティリティ系、偶数はスペシャリティ系と、すっきり並べられたBMWのSUVラインナップにおいて、X2はちょっと異端的な存在だった。それは多分に形状的な理由が大きかったとみえて、新しいX2はハッチバックからファストバック的なプロポーションへ一新、X4やX6といった上位モデルとの関連を強めたルックスとなっている。 そのぶんというわけではないのだろうが、新型X2は初代比で全長が約200mm長くなるなど、車格感は完全にひと回りは大きくなった。全高も1550mm超となるなど、都市部での使い勝手は後退。一方で車室空間はX1にほぼ準拠、荷室容量に至ってはX1より大きい560リッターを確保するなど、ただ単にデカくなったというだけではなく、実用面ではしっかり前進しているのが特徴だ。Cd値も内燃機モデルが0.27、BEVのiX2は0.25と、車格に見合わぬ優れた効率を実現している。 X2の触れておくべき特徴といえば、最新世代のBMW OS9を先駆けて投入したことだろう。アプリの追加やアップデートによる車内環境の進化を前提としたいわゆるソフトウェア・ディファインド的な概念を取り入れており、アンドロイドをベースとすることもあって、今後積極的に参入してくるサードパーティにも門戸が開かれたことになる。来年以降に導入予定のBEV専用アーキテクチャーを用いたノイエクラッセ・シリーズにもこのOSの発展型が搭載されることは必定ゆえ、先んじてBMWの未来を先取りしたような車中体験が待っているというわけだ。 X2のパワートレインのバリエーションは内燃機とBEVの2つとなる。うち、内燃機側はB48系2リッター4気筒ターボを搭載するガソリン・モデルで、20i(204ps/300Nm)とM35i(317ps/400Nm)の2グレード構成。共にトランスミッションは7段DCTを採用し、駆動方式は電子制御多板クラッチを用いて最大50%の後輪駆動配分を実現するxDrive、すなわちオンデマンド型四駆となる。 一方、BEVのiX2は1モーター前輪駆動の20と2モーター四輪駆動の30という2グレード構成。共に66.5kWhのバッテリーを床下に搭載し、欧州WLTPモードでの航続距離は20が478km、30が449kmだ。日本仕様にラインナップされる30は、総合アウトプットが272ps/494Nmと内燃機でいえば3リッターディーゼルにも匹敵。0-100km/h加速が5.6秒とM35iとほぼ遜色のない加速力を有している。 ◆人肌的な感覚で躾けてある 試乗には動力性能が肉薄するその2モデル、ガソリンのM35iとBEVの30が充てがわれた。まず居住性的に両モデルはまったく同じというわけではない。お察しの通り、30の側はBEVがゆえ搭載するバッテリーの関係で前席座面付近から後方にかけて床面が若干高くなっている。ペダル操作のスペースがある前席は影響はないが、後席は大腿部がやや持ち上がる着座姿勢になってしまうことを頭に入れておくべきだろう。 こういう比較になると、乗り心地の面では重心や重量を利してBEVの側が優位に立つことが多いが、それをも上回るフットワークをみせてくれたのが内燃機のM35iだった。標準でエアボリュームの小さい20インチ・タイヤを履くネガもものともせず、低速域から微小な凹凸にもしっかり減衰が立ち上がり、入力の角が取れた丸い乗り味をみせてくれる。 30の側で感心させられるのはアクセル操作に即応しながら出過ぎることのないトルク制御のリニアさ、そして速度コントロールのしやすさだ。BEVといえば出だしからの猛烈な加速をイメージする人も多いだろうし、iX2もそういうアウトプットは無理ではない。そこを敢えて人肌的な感覚で呼応するように躾けてある。実にクルマ屋らしい良識のある仕事ぶりだと思う。 X1に対すれば身のこなしが軽やかなハンドリングも個性のひとつ。ファーストカーとしても通用する実用性や快適性にBMWらしい敏捷性を程よく加えた、新しいX2はクセ強めなデザインとは裏腹にバランスよく仕上がった1台といえそうだ。 文=渡辺敏史 写真=BMW (ENGINE2024年5月号)
ENGINE編集部
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