生産領域のDXに踏み出す三菱マテリアル 「ぎりぎりの現場」でどう改革を進めるか
データ活用を具体的な成果に結び付ける
MONOist 生産領域でのDXの現状と展望を教えてください。 端山氏 先ほど言ったように、当社では生産現場のシステムも必要に応じてスクラッチ開発で進めてきた。実績データは取得できるが、工場全体のモノづくりのやり方を変えていくには不足感がある。デジタル技術を活用したスマートファクトリーを実現する方向にシフトしていく必要がある。スマート化は歩留まりの改善やリードタイムの短縮にもつながるが、安心安全な工場を作るという意味でも大きな意義がある。 ただ、そう簡単にはいかない。例えば、生産ライン単位で検査自動化を進めて、検査データをPCに取り込むことや、生産ライン単位での自動化は可能だ。ただ、そうした取り組みは局所的なものにとどまってしまい、工場全体やサプライチェーン全体のスマート化につなげづらい。古い工場だと動線改善も難しく、デジタル化だけではどうにもならない部分もあると感じている。もちろん、その上でスマートファクトリー化は今後も積極的に推進していく。 MONOist 全社のデータ基盤整備もそうした部分最適化を乗り越えるためのものかと思います。 端山氏 もともとDXに取り組む以前からデータの全社最適化の重要性は意識していたが、事業部の事情もあり着手しない状況が続いていた。MMDXの推進に当たり、データ活用の重要性を認識してももらうことができ、Snowflakeによる基盤整備は進んだ。 ただ、データは蓄積するだけではなく、いかにビジネスに有効活用するかが大事だ。現在は事例の横展開に取り組んでいるところで、その意味ではまだ道半ばだ。 MONOist 今後、データ活用の領域でどのようなことに取り組む予定ですか。 端山氏 データ活用の取り組みが、中期経営戦略で掲げているような数値目標の達成により直接的に結び付くようにしたい。現状ではデータ収集、見える化の段階で取り組みが止まってしまっており、事業成果に結び付くようなデータ活用のフェーズに進んでいる案件は少ない。売り上げの増加や営業利益などの金額的な数値だけでなく、在庫回転率などでもいい。データを見て眺めるだけではなくて、改善のための具体的なアクションにつなげることが求められている。現場だけでなく、経営層もより効果的なデータ活用ができるようにもしていきたい。
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