北海道内の被害10億円超 SNS型投資詐欺 従来詐欺との違いは?
「SNS型投資・ロマンス詐欺」の被害が止まらない。北海道内の被害額の合計は、今年に入って5月末までに10億5千万円(暫定値)を超えた。この統計にはまだ盛り込まれていないが、5月末には札幌市の女性が約1億円、今月12日には日高地方の女性が約2400万円をだましとられていたこともわかった。道警は危機感を募らせている。 【写真】「堀江貴文」を名乗るアカウントから来たLINE 「SNSで投資に誘われていませんか」 JR札幌駅で今月、警察官が被害急増を知らせるビラを配った。 詐欺の形態は年々変化している。道警によると、2年前ごろまでは、「オレオレ詐欺」で知られる「特殊詐欺」が主流だった。昨年も道内で5・7億円(161件)の被害があった。 だが今年は、特殊詐欺とは別の手口で、すでにその倍の被害額が出ている。 5月までの5カ月間で、著名人や専門家のネット上の偽広告をきっかけに投資に誘われる「SNS型投資詐欺」の被害が約6・7億円(37件)。SNSのやりとりで恋愛感情を抱かせてだます「ロマンス詐欺」は約3・8億円(29件)だった。 高齢者が狙われていた特殊詐欺と異なり、被害者は、40~60代の「現役世代」が8割という。 道警生活安全企画課の担当者は「面識のない人からSNS上で『投資』の話が出たら詐欺」と断言。怪しく思ったら、最寄りの警察署か専用電話「#9110」への相談を呼びかけている。(新谷千布美) ■いちからわかる SNS型投資・ロマンス詐欺って? Q 「SNS型投資・ロマンス詐欺」って? A 「SNS型投資詐欺」は有名人の偽広告をネット上に出すなどして投資に誘う。本物に似せた有名人の偽アカウントからLINEが届き、質疑応答をするなど、手口は巧妙だ。 「ロマンス詐欺」は恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取る。最後は投資に誘導されることが多い。SNSを巧みに使い、長い時間をかけて被害者の「信頼」を得るという共通点があり、昨年から被害が急増している。 Q これまでの詐欺とは何が違うの? A 手口やターゲットが異なる。これまで目立っていた「特殊詐欺」は、電話で公的機関の職員などを名乗り、ATMを操作させたり、キャッシュカードをすり替えたりしていた。高齢者の被害が多かった。 投資・ロマンス詐欺はSNSが使われ、幅広い年代が被害にあっている。1人あたりの被害額の全国平均も1千万円を超え、特殊詐欺の約240万円を上回る。 Q 犯人の特定は難しい? A 北海道警と徳島県警の連携で今年4月、徳島県の男性から現金約2千万円をだましとろうとした詐欺未遂の容疑で外国籍の男1人が現行犯逮捕された。福島、広島などでも逮捕例はあるが、誰がどこまで関わっているのか特定が難しく、全容は分かっていない。 事件ごとにメンバーが変わる「匿名・流動型犯罪グループ」(匿流、トクリュウ)の可能性もある。警察は全国的な連携を強めて捜査している。北海道警も今春、専門部署を設けた。 Q どうやったら、だまされない? A 投資会社のホームページやアプリは巧妙に作られていて、途中では気づきにくい。お金を振り込む送金先の口座が個人名義だったり、別の法人名義だったりすると、詐欺の可能性が高い。会社の場合、金融庁のウェブサイトで検索し、登録が無ければ違法な会社だ。(新谷千布美)
朝日新聞社