ボルボの衝突試験取材から考える 国産メーカーの「物足りなさ」【復刻・クルマの達人】
■IIHSのスモールオーバーラップ
「達人コラム」で何度かアメリカIIHS(道路安全保険協会)が独自に始めた「スモールオーバーラップ衝突」を紹介してきた。 今までのオーバーラップより「衝突させる面積」を少なくした形態で、アメリカにおける重篤事故の典型例になっている。 この試験、今まで安全性の高さをアピールしてきたベンツやBMWなどドイツ勢すら次々と厳しい評価となり、トヨタに至っては試験を受けた全モデルがすべて落第(プアという厳しい判定)。通常のオフセット衝突とまったく違う結果になった。 慌てた日本勢は急遽アメリカ向けモデルだけボディ構造の変更まで行なう事態になっている。 今やアメリカ向けの車種の開発チームは、スモールオーバーラップ対応にテンテコ舞いしているのだった(大半はアメリカ仕様だけ安全性を強化してます)。 そんななか、ボルボは未対応のまま続々と最高評価を獲得している。 以前の達人コラムで紹介したとおり、10年前に取材した時からスモールオーバーラップの危険性を認識しており、対応していたからだ。 オーバーラップ率だけでなく、衝突速度の差も決定的な違いが出てくることだろう。 ボルボは64km/h以上での試験データもたくさん持っており、可能なかぎり対策してきたそうな。もっと意外だったのが乳幼児の乗せ方。実際の事故を分析した結果、日本の常識と大きく違う。 これについては次号で詳しく紹介したい。いずれにしろ日本の自動車メーカーもそろそろ次のステップを踏み出すべき時期を迎えたと痛感しました。 (内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)