「樹の枝に見えたのは兵士たちの……」米軍の砲弾炸裂後に広がった地獄の光景 #戦争の記憶
米軍の砲弾で、部下たちの身体がバラバラに……
この陣地は、第62師団の兵士が構築し残していったもので、砲弾の破片や小銃弾ならば、防御の役割をじゅうぶんに果たしていた。ふたたび、野戦陣地に米軍の迫撃砲弾が降り注ぎ始める。昨日までは防ぐことができていた攻撃だ。 しかし、グスッと鈍い音と同時に、普通の砲弾ではない炸裂音と激しい衝撃が辺りを襲った。そのたびに土砂が天に吹き上がり、樹の枝のようなものが一緒に舞い上がっている。 「うん? あの爆発の仕方は短延期砲弾か……」 巻き上がる砂煙でうす暗くなった空を見上げながら、つぶやいた。地面に潜り込んでから破裂する厄介な弾だ。 そして、目をこらすと、樹の枝に見えたのは部下たちの手であり、足であった。それが宙に舞い上がっているのだ。
*** 第2回の〈「夫は肉一切れも残さずに死んだのですか」戦死の報を受け、最愛の人の弟と再婚した妻の気丈〉では、倉田貫一中尉の妻・琴さんが戦死した夫の元上官にあたる伊東大隊長へしたためた手紙を紹介する。 ※『ずっと、ずっと帰りを待っていました 「沖縄戦」指揮官と遺族の往復書簡』より一部抜粋・再編集。
デイリー新潮編集部
新潮社