「家出した」「死にたい」…元養護教員に届いたDM 退職し探した道、最長2年の〝雨宿り〟
ちょっと疲れたときの「雨宿り」
菊池さんが18歳以上の女性の住居支援のかたちをシェアハウスとしたのには強いこだわりがあります。 児童相談所の対象は18歳までですが、「18歳を過ぎてから、『あれは暴力だった、虐待だった』と気づく子たちもいます」(菊池さん)。 18歳以上の住まいの提供としては「自立援助ホーム」という枠組もありますが、児童相談所の介入が必要となり、菊池さんを頼ってくれた若者の多くは対象外となってしまいます。 菊池さんは直接頼ってきてくれた、かつての教え子たちを助けたいという気持ちから、困り事を抱えている若者と直接つながれるシェアハウスという手段を選んだのだといいます。 シェアハウスの入居期間は原則1年、最長2年まで。 「アマヤドリには、ちょっと疲れたときの『雨宿り』という意味合いを持たせています」と菊池さん。「『環境を変えて、深呼吸してみるのもいいものだな』と思ってもらえたらうれしい」 その結果、入居者を行政など外部機関とつなぐようなケースもあった一方で、「アマヤドリ」に数日間滞在した後、家族との話し合いの場を持ち関係が改善するケースもありました。 これまでの入居者は、平均200日ほどをこの場所で「雨宿り」し、次の場所に向かったそう。 「(入居期間中に)就労環境を整えるのがゴールではなく、まず1年間、環境を変えてみるというきかっけ作りの場所です。シェアハウスを出た後も相談支援というかたちでつながり続けています」
「選択する」という経験
法人としてのアマヤドリは、相談支援や同行支援、居住支援なども展開していますが、女性に限った支援としているのはシェアハウスだけです。 その理由について、菊池さんは「性被害など、何かしらの被害に遭う人が、私の周りでは圧倒的に女性が多かった」と話します。さらに、お金を稼ぎながら一人暮らしをしようと調べる女性が、性産業に出会う確率が高いと感じているといいます。 「選択肢がたくさんある中で、その産業を選ぶのと、選択肢がない中で『追い込まれて、仕方なく』そちらにいくのとでは違うと思うんです」と菊池さん。一つ一つ言葉を選びながら話します。 そのため、シェアハウスで生活をする中で、「選択する」ことを身につけてほしいと考えています。 「シェアハウスに初めて来たとき、夕食をお魚にするかお肉にするかも選べない子もいます。選択を積み重ねる経験をすることで、『本当に望むところ』を一緒に探していきたいと思っています」