逆風が吹いている、でも前だけを見ていよう――NGT48、長い絶望の後で
「私、本当にNGT48に加入したのかな?」
一度入ったトンネルは長かった。藤崎未夢(19)が当時の苦悩を語る。 「研究生としてグループに加入してから、ファンの皆さんの前でパフォーマンスした時間より、ステージに立てなかった時間の方が長かったように感じていて。『私、本当にNGT48に加入したのかな?』と悩む日がありました」
同じく研究生の安藤千伽奈(19)は、何もできないことに対し自責の念を抱くほどだった。 「『自分がもっと努力していれば、もっとうまくいけたんじゃないのかな?』と考えることもありました」
危機的な状況なのは本人たちが一番わかっていた。結果的に、「事件」から現在までに11人がNGT48を去っている。そんな状況だったからこそ、メンバーは一つになろうと幾度となく話し合いの場を設けてきた。時には、「この活動を続けるかどうか?」の話題にも触れた。本間日陽(20)は、メンバーの意志を確認したひとりだ。 「『これからも頑張れますか? 頑張れると思った人は集まって話しましょう』と呼びかけたこともあります。結果、全員が集まりました。『厳しい意見に対してどう思っている?』という話もみんなでしました。自分たちがみなさんに迷惑をかけてしまった事実がある以上、そこはちゃんと受け止めて、みんなで頑張らないといけないねって」(本間)
そんななか、一つの転機が訪れる。2019年8月、国内最大級のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)」の2日目に“前座”という異例の形で出演が決まったのだ。 安藤が、開演直前の様子を振り返る。 「始まる前にメンバー全員で円陣を組んで声出ししたんですよ。その時に『ああ、私ここにいるんだ』っていう、すごく嬉しい感覚が湧きあがってきました」 全メンバーが壇上にあがると、中央に立った荻野が開口一番、今の思いを述べた。NGT48全員が再びステージに立ちたい思いを持っていること、その場をTIFが用意してくれたこと。何よりこの日集まった観客とこれまでNGT48を応援し支えたファン、新潟県民に向けて誠心誠意これから歩んでいくと。 「あの瞬間、すごいバッシングをん受けるんじゃないかと怖くて仕方なかった」(荻野) 全5曲を披露し終えると、拍手と歓声が彼女たちを包みこんだ。かつて受けていたものと比べれば決して大きくはない。それでも応援の声がNGT48に戻ってきた。彼女たちの止まっていた時計の針はゆっくりと、静かに動き出した。