<ラグビー>世界選抜・五郎丸が見た完敗・日本「点差はフィジカルの差」
一方、自身の対面にあたるフルバックの野口竜司には、期待するがゆえの改善点も提示した。身長177センチ、体重86キロの東海大4年生に対し、「スキルは十二分に持ち合わせている。あとは今後、世界のトップで戦えるだけのフィジカルをつける必要があると思います」と、述べるのである。 身長185センチ、体重100キロの五郎丸は、2015年までの4年間、エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ体制下で猛鍛錬を遂行。ジョーンズの右腕だったジョン・プライヤーストレングス&コンディショニングコーディネーターに追い込まれながら、運動量でも優位に立てるフィットネス(持久力)、屈強なフィジカルを作り上げてきた。他の選手もそれに倣ったことが、イングランド大会での歴史的3勝への道筋を作ったとされる。 それだけに五郎丸は、「フィジカル」の課題は野口に限ったことではないと強調する。 「フィジカルから逃げていたらラグビーはできないので。きょうも、後半にあれだけの点差(14-33)がついたのはフィジカルの差が現れた結果だと思います」 事実、肉弾戦での世界選抜のファイトには、姫野和樹ら初代表組も舌を巻いた格好だった。 元オーストラリア代表監督で世界選抜のロビー・ディーンズヘッドコーチが推察するに、いまの日本代表は「ハードワークしている状態。フィジカルを鍛えなくてはいけない時期としていて、試合(結果)は二次的なものと捉えている部分もあるのでは」という状況下だ。 2016年から国際リーグのスーパーラグビーに日本のサンウルブズが加わったことで、この国にはインターナショナルマッチでのコンタクトに慣れる選手が増えた。とはいえ国内シーズンも含めた過密日程下、じっくりと筋力やスタミナをつける時間が得づらくなった。 さらにイングランド大会後に代表入りした野口のような選手は、ジョーンズが示した身体面の国際基準を知らぬまま世界と戦っている。かような積み重ねが、今年6月の対アイルランド代表戦2連敗の遠因になったとも指摘されている。 五郎丸の証言は、そうした事情に踏み込んだものでは決してない。ただ、普遍的な強化ポイントを指摘する向きはある。 現代表で屈指の運動量を誇る稲垣は、目下遂行中の防御システムの課題に絡めてフィットネスの必要性を語る。 「後半に疲れてくると、(前に)上がり切れなくなってくる。そこで上がり続けるフィットネスをつけなくてはいけない。厳しい状況でも全員で統一したディフェンスができないといけない。ずっと上がり続けるのはキツいんですけど、誰かが上がらずにその間を抜かれる方がチームとしてキツくなる。フィットネスは最低でもワールドスタンダードには届く必要がある」 さて、この日は、安定感を披露した五郎丸について、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは触れず、ファン待望の代表復帰については言及されなかった。そもそも今回の代表活動に向け、9月からの複数回にわたる候補合宿へもオファーがかからなかった。2019年に向けた正フルバック争いでは、現状、野口やサントリーの松島幸太朗が軸となりそうである。 (文責・向風見也/ラグビーライター)