交通違反裁判で無罪。違反点数の行方は?【行政書士ライダーが徹底解説】
注目を集めた『譲られても歩行者妨害?』事件
横断歩道を渡ろうとしている歩行者が一旦停止した運転者に対し「先に行って」と譲る意思を明確に示したのでそれを確認した上で発進した映像記録が残っているのに違反処理され点数もカウントされたという事件。 世間の注目を集めた事件なのでネット上にもたくさん取り上げられています。覚えておられる方も多いのではないでしょうか? この事件はかなり大きく報道され猛烈な世間の批判を浴びたせいか、結果的に警察が謝罪。違反処理を取消し点数も抹消されました。 ただし、この事例はサインを拒否し裁判で無罪を勝ち取ったモノではありません。 『外圧の影響?』とはいえ、最終的には警察が自ら抹消処理を決断した事例であることはリンクが示す通りです。 では、違反者本人など外部の者が「抹消せよ」と警察に対して要請する手続きはあるのでしょうか? 残念ながら『ない』が結論です。
違反点数と行政処分
突然ですが、保健所が飲食店に対し『営業停止命令』を出したというニュースを聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。 この命令も不利益な行政処分の一種。免停などと同様、市民が不利益な行政処分を受けた場合、行政機関や裁判所に対して「処分を取消せ」と不服を申し立てる制度があります。 行政機関に対するものが行政不服審査、裁判所に対するものが行政訴訟です。 ところが、次の理由によりその両制度は点数については使えないとされているのです。
打つ手がない訳では…
難しい理屈は省略しますが、点数のカウントそれ自体は行政上の手続きの一種ではあるものの不利益な行政処分には該当しないとされています。 一方、行政不服審査も行政訴訟も不利益処分に対抗する制度。 その結果、処分ではない点数のカウントそれ自体の抹消を違反者側から求める方法は事実上封じられています。 先ほどのように警察自ら抹消を決断すれば別ですが…。 と、ここまでお読みいただいて諦めそうになったそこのあなた。ちょっと待って下さい。 打つ手が全くない訳ではありません。 先ほど点数それ自体は行政処分ではないから抹消せよと言う方法はないと言いましたよね。 勘の良い読者の方はもうお気付きかもしれませんが、点数カウントによって行政処分がなされた場合はどうか? はい、その通り。 免停や更新時にゴールドからブルーになるといった行政処分があったものの、あの点数さえなかったら処分されずに済んだという場合。 こちらも難しい理屈は省略しますが、これらの場合は行政処分を理由に行政不服審査や行政裁判が可能です。その中で納得いかない違反点数を争うのです。 ただし、勝てるかどうかは別。 いや、別どころか警察官の現認には強い証拠能力が認められているため明確で強力な証拠がなければ勝つのは至難の業というのが実際のようです。 また、行政不服審査や行政裁判は一般の方がひとりで戦うにはハードルが高いと言われており、そのため弁護士に依頼する方がベター。 そうなると2桁~3桁万円レベルの出費だけでなく、かなりの時間や労力が必要になるでしょう。 以上の理由により警察官による違反告知が明らかに不当で、しかもクリアなドラレコ映像などの強力な証拠がある場合を除きサイン拒否はおススメできない、というのが筆者の立場です。 ただし、一つだけ確実に言えることはどちらを選ぶかは運転者の自由だという点。 その時どちらを選ぶかはあなた次第です。
行政書士ライダー